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襲われて―産廃の闇、自治の光

価格:¥ 2,205 (税込)
出版:岩波書店
カテゴリ:単行本
ページ:291頁
JAN:9784000224000
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で131759位
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レビュー
本当におもしろい Date:2010-01-10
おすすめ度
 岐阜・御嵩町長が(おそらく)産廃処分場問題絡みで襲撃され瀕死の重傷を負った事件は、
当時でも大きなニュースになったが、本書はその元町長が事件を含めて産廃問題を扱った書である。
とにかく襲撃事件にせよ、産廃問題の流れにせよ、当事者そのものの報告だから面白くないわけがない。
元ジャーナリストの筆致はクールながら、最後まで一気に読ませる熱をもっている。

 それにしても当時このニュースに触れ衝撃を受けた覚えがあるものの、それ以外は何も記憶に残っておらず、
背景にある産廃問題についても何も知らない自分が恥ずかしくなる。そう感じざるを得ないほど、著者に活躍には頭がさがる。

 とにかく一読していただくのが一番よいのだが、読後の感想を二つほど。
 ひとつは御嵩町はいいタイミングでいい町長を得られたということ。自治体というのがそのトップ次第でいかようにも変わるという好例を見るよう。
もう一つは本書の中でも再三出てくるが、あまりにも不可思議な岐阜県当局の存在である。
こんな県当局なら一層ないほうがいい、と思わせる無知、無能ぶりである。

 本書は産廃行政を巡る地方自治のあり方、襲撃事件の背景にあると思われる暴力装置、県・市町村という地方自治のあり方、
問題に直面した際の住民たちの動きなどなど、様々な立場で様々な読み方ができる極めておもしろい好著である。
産廃に群がるアリ VS. 女性パワー Date:2009-11-11
おすすめ度
 「産廃業は、もうかる商売である……その周りには利権の匂いにさとい魑魅魍魎(ちみもうりょう)たちが、まるで甘い蜜に群がるアリのように集まってくる」
 この群がるアリは暴力も厭わない。13年前、柳川町長が産廃処分場に「待った」をかけて、暴漢に襲われ殺されかけた事件は、本当にショッキングだった。しかしその後は、うかつにもすっかり忘れたままだった。今、本書を読み、また暗たんたる気持ちになってしまった。まだ犯人は捕まっていず、やがて時効を迎えるという。
 本書は、産廃処分場をめぐって町民、町議会、県、県警、産廃業者の動きを丹念に追った、元町長の手記である。ゴミの不法投棄や、リサイクルがらみの問題はよく耳にするが、いつもその背後に潜む巨大な闇の世界については、徹底追求した報道がなされないことに失望させられてきた。しかし本書は違う。そのタブーとされる領域に淡々とした筆致で踏み込んでいる。
 ところで、町で最初に産廃反対運動を始めたのは若い母親たちだったという。無言電話や脅しにも屈せず行動を続けたという。やはり畏るべきものは、女性のひたむきなパワーだ。頭が上がらない。
 鳩山首相は就任早々、温室効果ガスの「25%削減」を世界に宣言した。日本人としてぜひ実現させたい。が、おそらく、この対策のまわりにも、蜜を求めるアリが群がることだろう。女性のパワーばかりに頼ってはいられない。ぼくも省エネを心がけるところから始めよう。
オ モ シ ロ す ぎ る Date:2009-11-03
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なにしろ、まずは突然襲われ瀕死の重傷から始まる。もう最初から息もつかせぬ展開で、ため息まじりに一気に読み進んでしまった。ちょっと不謹慎だが、うごめくフィクサーやエージェントのエピソードなどは オ モ シ ロ す ぎ る。

ところが、決しておどろおどろしい本ではない。重苦しい告発の書でもない。何しろ、柳川氏は地縁があっただけで、何も知らずに町長にかつがれた元NHK記者の落下傘インテリに過ぎなかった。実に淡々とした筆致で、文章も読みやすい。

いらぬ説明は省く。とにかく盛りだくさんだ。
産廃という迷惑事業を取り巻く政治、行政、闇社会との結びつきだけではない。霞ヶ関、県、市町村という重層構造の度し難い封建制や、ジャーナリズムの正体、「委員会」「諮問会議」に跋扈する御用学者などなど、長年の体制に巣くった根の深さ。ひとつひとつに現実の重みがある。

政権交代のいま、いわゆる改革やチェンジがそう簡単ではないことを実感する。

とにかく読んでいただきたい。
日本はこのような人を必要としています。 Date:2009-11-02
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 町長が襲撃された事件は報道で知っていましたが、過去の事として殆ど忘れていました。しかし最近新聞の書評でこの本の存在を知り、早速購入しました。殆どの登場人物が実名で書かれているので迫力があります。襲撃されて頭蓋骨骨折、右腕骨折等の瀕死の重傷を負いながら、直後の行動には身震いがします。柳川さんのような人が数人でも出てくれば、日本はもっともっと良くなるでしょう。
日本は「法の支配」による法治国家ではなく,「金と暴力の支配」による放置国家である。 Date:2009-09-14
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本書は,柳川元町長の,産廃利権をめぐる魑魅魍魎との,文字通り命懸けの「闘い」の記録である。その志の崇高さ,圧倒的な実行力と粘り強さに感動した。

そして,改めて,その「闘い」の現場における,法律と法律家の無力・無能,機能不全,「法律による行政」,「法の支配」の欠如を痛感した。それどころか,法律家が無法を助長している,という現実。

そもそも処分場建設申請の法的要件に不備があったにもかかわらず,当時の町の顧問弁護士は「反対しつづけることは無理だろう。むしろ身返りの条件を求めた方がよい」とアドバイスしたという。

「関係法令や文献を徹底的に渉猟,調査し,憲法に遡って,法的問題を調査,検討する」,という法律のプロとしての基本を怠ったまま,当たり障りのないアドバイスをしたらしい,その弁護士の姿が目に浮かぶ。

本来,司法制度は,県や産廃業者の不法から,町民のような少数者の権利を守るために存在する筈である。ところが,司法は,本件の解決には利用されなかった。それどころか,法の実現者である筈の弁護士は,自ら「法による解決」を放棄した。

そして,逆に,産廃業者によって訴訟制度が悪用された。重い現実。

住民投票前,産廃業者は,「住民投票後も町と町長に対する訴訟を濫発し,合計10本となった」。「いわれのない不当な訴訟を濫発されても,なんら規制はなく,それを抑制する方法もない」。

現状,不当訴訟に対する規制は不十分である。現行制度は,不当訴訟に寛容で,正当な訴訟に厳しい(開示制度の不存在,立証ハードルの高さ,損害額認定の厳格さ等)。「訴え損」であり,「訴えられ損」であると言える。

そういう中で,中坊先生の,情報公開は「情報をお天道様にさらすということです。・・・太陽光線には殺菌力がありますから,バイ菌は死にます」という言葉からも示唆を受け,柳川前町長が,情報公開法を成立させた,という。一つの救いである。
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