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静かな大地

価格:¥ 2,415 (税込)
出版:朝日新聞社
カテゴリ:単行本
ページ:688頁
JAN:9784022578730
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おすすめ度:

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レビュー
心にしみる、せつない物語 Date:2007-06-04
おすすめ度
 「日本は単一民族国家である。」国家主義的な政治家が好んで口にする言葉だが、実は私たち自身、特に違和感もなくその言葉を受け入れてしまっているのではないか。

 小学生の時訪れた北海道で、アイヌの存在を初めて、しかも少なからぬ衝撃を伴い知ったことを記憶している。
 明治政府の同化政策により`和人'の名を名乗らされ、今は北海道の一部地域で観光客を相手にその存在を主張することが主たる生活の糧となってしまった感もあるアイヌ。皮肉にも私自身、それがきっかけでアイヌを知ることになったのだが・・・。
  
 本書は、主人公である宗形三郎の姪が物語を紡ぐという形で、明治初期に淡路島から蝦夷地に移り住んだ三郎が、アイヌ人オシアンクルとの出会いをきっかけにアイヌ人と共に未開の原野を切り開き成功をおさめる前半。そして和人たちの嫉妬が彼らを葬ってしまうことになる後半へと、自然と共に生きるアイヌの伝統を織り込みながら展開されていく。

 日本有数の観光地となった北海道。四季それぞれのすばらしい自然が訪れる者の心をとらえてはなさないその地に、実は本書が描いたような悲しい歴史がふと挿入されているのだ。 
 壮大さの中にも寂寥感が漂い、切り取られた歴史の奥深さを伝えてくれる素晴らしい小説である。
日本人は絶対に読んでおくべき一冊 Date:2006-07-14
おすすめ度
アイヌ民族とその文化を迫害し抹殺してきた明治以降の日本の歴史。とても重いテーマであるにもかかわらず、語られることは少ない。作者は滅び行くアイヌの人々の側からスポットを当て、北海道の大地に暮らすアイヌ民族の歴史と文化を語ってくれる。アイヌと行動を共にする三郎兄弟の存在が、我々和人に僅かな癒しを与えるが、それ故になんと切ない結末を迎えることか。
長編大作はであるが一気に読ませる作者の実力は素晴らしい。久々に読後の余韻に浸れる一冊であった。
出会えて本当に良かった小説 Date:2006-06-14
おすすめ度
作者にとって「集大成」的な小説と言えるだろう。

ここには、作者の母方の家系に伝わる物語をいつか書きたかった
という個人的な強い思いが込められているばかりでなく、文学的
な野心も感じられる。父が娘に語る話し言葉、手紙、昔話、第三
者の証言など、章によって文体が変わる。これはさまざまな視点
から歴史を伝え、小説の中に立体的な効果を生み出すだけでなく、
作者が京都大学文学部で行った講義で紹介したジェームズ・ジョ
イスの『ユ リシーズ』へのオマージュとしても読みとれる。
[『世界文学を読みほどく−スタンダールからピンチョンまで』
(2005年)189頁を参照]。

さらに、勝者の言葉でではなく、敗者の、失われた言葉を拾いな
がら歴史を語ろうという姿勢から、『楽しい終末』(1993年)に
おいて考察の形で留まったまま一旦筆を置いた問題に、今度は実
践的に取り組んでいることが窺える。また『ハワイイ紀行』
(1996年)でも触れ、そして作者の友人で、数多くの名著を残し
た写真家の故・星野道夫がアラスカやカナダのイヌイットの歴史
と現在の暮らしを通じてわれわれに伝えた、先住民が地理的、社
会的、政治的、経済的にも追いやられる歴史の過程も、本書の中
で丁寧かつ冷静に、真摯に描かれている。

ある民族の歴史の一部分を再構築するというスケールの大きな物
語の中に、夫婦の馴れ初めなどの微笑ましいエピソードもあり
(しかも登場する女性たちがとても魅力的で輝いている)、実は
すんなりと親しめる作品である。もともとは新聞小説だったから、
読みやすいように書かれているということもあるのだろう。

そういうこともあってか、600頁以上という、長編の中でもしっ
かり長い方に入る作品であるにもかかわらず、あまりに面白いが
ゆえに12日間で読み終わってしまった。

読みながらも、そして読み終えたあとも、出会えたことが本当に
嬉しくなる小説である。
渦中に身を置くこと Date:2005-11-01
おすすめ度
アイヌの悲しい物語ではない。
北海道の開拓史ではない。

人は自分と異なる人を前にしたとき、どういう立場を取るか。
搾取され虐げられる人々を前に、同情するのはたやすい。
同情とは、他者と自分とが異なることが前提にある。
他者とはなりえない自分が、他者を憐れむことだ。
そこに他者と自分とを同一視することは、ない。

人間は平等ではない。
生まれた場所・時代・容姿・能力・・。
そのどれもが差別たり得る。
世の中にたくさんいる高潔な人のどれだけが、
その渦中に身を置くことができるだろう。
施す側にある優位を捨てることができるだろう。

三郎さんは和人であって和人ではない。
多くの人がそうするように、
和人としてアイヌを助けたのではない。
対岸の火事のようにアイヌの困難を憂いたのではない。

しかし三郎さんはアイヌにはなれなかった。
熊にはなれなかった。
それが三郎さんの悲劇ではないか。

悲しい、苦しい、物語。

読ませる内容 Date:2005-07-14
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静内を舞台にした和人とアイヌの物語。
蝦夷地(北海道)の歴史は、おしなべてアイヌ側の視点が欠落した状態で、まるで抑圧された側(アイヌ)の苦悩など存在しないかのように語られることが多い。結果、どこかの映画に見られるように、和人にとって都合の良い話が一般大衆に提示されるようなことになる。
しかし実際は、アイヌモシリたる北海道には当然アイヌの歴史があり、後から入った和人との間にも様々な事実関係(和人による一方的搾取など)が存在するのであって、片落ちではいけないことは自明なこと。この作品は、その部分をしっかり押さえてあるように思う。「怒り」よりも「悲しみ」にウェイトが感じられることや、恋の存在や情緒的な風景描写など、小説の娯楽性を考えればそれで正解だろう。
その複雑なテーマが根底にあるにも関わらず、一気に読ませる構成力と筆致力はさすがだ。
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