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時刻表2万キロ (角川文庫 (5904))

価格:¥ 580 (税込)
出版:角川書店
カテゴリ:文庫
ページ:297頁
JAN:9784041598016
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で108723位
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レビュー
偉大なる鉄道紀行の誕生 記念碑的な作品 Date:2009-03-07
おすすめ度
30年以上前に単行本を購入して何回も熟読した本を再び文庫で読むほどこの作品は魅力に溢れています。「乗りつぶし」「国鉄全線完乗」という言葉や意味合いも全て、本書が出版され、評判になってから一般的に語られるようになりました。

私も当時よくローカル線を旅しましたし、鉄道ジャーナルを読んでは未知なる地域に夢を馳せていた頃ですから、宮脇俊三さんの登場は衝撃でした。

本書にはもう廃線になって乗れなくなったローカル線が一杯登場します。旧国鉄時代の車両や駅舎の状況は今や貴重なルポとなりました。そして日本全国にこんな場所があったのか、という素朴な感慨もまた本書の読後感の一つです。「自分自身のために国鉄の完全乗車を目指す」という意味合いが本文の中で書かれています。誰に認めてもらうわけでもなく、淡々と好きなことに邁進した宮脇さんに羨望の念を抱かずにはいられません。それゆえ、現在でも多くのファンが支持しているわけですが。

「乗りつぶし」の過程が、これほど素敵なノンフィクションへと昇華するのは筆者の飄々とした人柄を感じさせる文章にあります。気取らず、自分の考えを押し付けず、どこか諧謔的で、しっかりとユーモアを込めて、一人語りのような文章が実に味わい深いです。中央公論社の名編集長なのは十分理解できます。その人柄とこれだけの名文の使い手ですから、作家への転身もまた必然だったのでしょう。その契機に本書がなったわけで、多くの点で非常に意味のある出版だったということになります。

鉄道紀行というジャンルの確立もまた宮脇さんの功績ですし、それに続く作家が育たないのもまた宮脇さんの偉大さの裏返しです。すでに鬼籍に入られたため、新作が読めないこともあり、書かれた文章を再読しながら、この世界に浸っています。
「一人旅」に惹かれるあなたへ Date:2007-01-16
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 正月に実家に帰省した際、本棚に並んでいる宮脇氏の文庫本を数冊持ち帰ってきた。本書に出会ったのは昭和59年。私が高校生の時である。この『時刻表2万キロ』を読み終わった後に、無性にローカル線に乗りたくなり、当時発売されたばかりだった、国鉄の「青春18切符」を購入し、全国のローカル線の旅に出発したことを思い出した。

 昨日、既に黄ばんだ初版の本書を再び読み終えた。宮脇氏がいかに「鉄道旅」を愛し、偏狂ともいえる情熱をもって歯抜けのジグソーパズルとも言える未乗の全国各地のローカル線を乗りつぶしていったのか、同じように家庭を持ち、仕事に束縛される日々を送る年齢になって、あらためて彼の偉業に感嘆した。それは、TV番組でお膳立てされた、車窓風景・鉄道旅ではない、一人黙々と時刻表と取っ組み合いながら、自分の立てたプランのすばらしさに満悦してしまう旅である。

「一人旅」という言葉に、何か心を惹かれる方、是非読んでみてください。
「2万キロ」に最も純粋な宮脇さんを見た Date:2005-08-02
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 この本のおもしろさは周知の通りで、それをいちいち述べる必要は全くないのだが、当時の安定した身分を捨ててまで宮脇さんはよくぞ書いてくれたな、とあらためて思う。若くはない。事の成否によっては元名編集者の信用までもが問われる。並々ならぬ決意を要したはずだ。一世一代の大勝負に打って出たと言っていいだろう。

 しかし、フトコロには秘蔵のテーマ「時刻表2万キロ」を温めている。危険を冒してでも世に問うてみたい、という衝動が心を突き動かしたに違いない。事実それだけの価値がこの本には存在する。

 決断は正しかった。果たして「2万キロ」は大ブレイク、その後に陸続と発表された作品は我々ファンを魅了し、確固たる世界を築き上げたのだった。

 のちの作品の、相当に垢抜けした高級な文章と比較すれば「2万キロ」はこだわりが強くてやや未熟だ、との見方もあるようだが、私はむしろ趣味人らしい真っすぐで透明なアマチュアリズムをそこに感じるのであり、時間も労力も所持金も顧みず、純粋に趣味にのめり込む一途な姿が本書のさわやかな隠し味になっていると思う。

 もしかしたら「時刻表2万キロ」こそが本当に楽しんで書かれた唯一の作品だったのではなかろうか。それゆえに私は「2万キロ」に登場する、きわめて純粋な宮脇さんに親しみと安らぎを最も感じるのである。

 列車に乗る。ふと、となりで静かに窓外を見ている紳士がいる。宮脇さんのそんな姿を偲びながら読んでみよう。

この作品は文学です。 Date:2005-06-25
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題名を見て、この作品を単なる鉄道マニアの戯言と思って通り過ぎてしまうと大変残念である。
時刻表をたどって計画を立てるところはマニアならではという感もあるが、その辺に嫌味を感じないところが他の鉄道のライターとは大きく一線を画すところだ。

文学作品として鉄道マニア以外でも楽しく読めるのであるが、鉄道好きが読むと何気ないちょっとした一言が琴線に触れ、ニヤリとしてしまうのであった。

国鉄の恐ろしさ Date:2005-06-14
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 1978年に発表され、日本ノンフィクション賞を受賞した作品。
 それまで日の当たらない存在であった鉄道ファン、なかでも乗りつぶしファンを世間に認めさせた一冊として知られている。
国鉄の旅客路線の全てを乗りつぶすという奇特な体験を綴ったものだが、鉄道文学として最高級の水準に達している。目的なく鉄道に乗ること。厳密に言えば、鉄道に乗ることを目的として鉄道に乗る。この無目的さが良い。乗り慣れた車内を違った目で見るきっかけを与えてくれる。
 しかし、処女作ということもあり、完成度の高さはもうひとつ。宮脇ワールドへの入り口となる作品ではあるが、代表作とするには欠点が目に付く。特に鉄道ファンとしてのオタクさが前面に出てしまっているのは残念であった。
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