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一瞬の光 (角川文庫)

価格:¥ 780 (税込)
出版:角川書店
カテゴリ:文庫
ページ:589頁
JAN:9784043720019
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で26972位
おすすめ度:

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エディターレビュー
   橋田浩介は一流企業に勤めるエリートサラリーマン。38歳という異例の若さで人事課長に抜擢され、社長派の中核として忙しい毎日を送っていた。そんなある日、彼はトラウマを抱えた短大生の香折と出会い、その陰うつな過去と傷ついた魂に心を動かされ、彼女から目が離せなくなる。派閥間の争いや陰謀、信じていた人の裏切りですべてを失う中、浩介は香折の中に家族や恋人を超えた愛の形を見出していく。

   著者はデビュー作である本書で、「人は何のために生きるのか」「人を愛するとはどういうことか」という大きな問題に取り組んでいる。観念的になりがちなテーマを軸にしながらも、背景となる企業社会を残酷なまでにリアルに描くことで、地に足着いた存在感のある物語を作り上げた。無慈悲な現実の渦に見え隠れする感動、生きる喜び。そうした一瞬の光を求めてがむしゃらに生きる一人の男の姿が、そこにはある。

   ロングセラーになった『僕の中の壊れていない部分』(2002年刊)に比べると、性描写が粗く、文体もまだ定まっていない感がある。古風な女性観にもやはり疑問は残った。だが本書の魅力はそういった批判を超えたところ、懸命に生きる人間の輝きをすくい上げようという、作品に込められた熱い思いにあるのだ。終始冷静で理知的な浩介が本当の気持ちを叫ぶ場面、著者の思いがページからあふれ出し、読み手は心を打たれるだろう。(小尾慶一)

レビュー
アンバランスさ。 Date:2010-01-23
おすすめ度
直木賞受賞おめでとうございます!

「一瞬の光」を当時読んだときのインパクトはもの凄かったです。
今回の受賞に伴い、過去に読んだ事のある作品を読み直していますが
何度読み直しても、「一瞬の光」を読み終えた直後はボーっとしてします。

白石さんの描く世界は、頭で分かっていてもどうしようもない人間の部分がうまく描かれていると思います。
人は誰でもアンバランスであり、だからこそ魅力的なのだと思わせてくれますし
きっと誰もがそうなのだろうと思います。
そして、私はそこを分かち合える友人や恋人がどれほどいるのだろう、とも考えてしまいます。

賛否両論になる、設定の「ありえないだろ」の部分については
実際にエリートで顔の良い主人公のような男性はいると思いますし
美人で何も不自由の無いルイのような女性もいると思います。

作品の中で、彼らは与えられている事が多すぎる分、与える事に自分の価値を見いだしています。
人生何でも器用にやって来た人たちが、不器用になる瞬間に人間らしさを感じます。

香折も主人公との出会いが短いながらも、初めて生きる喜びや
自分の存在価値を認めてくれた主人公に、精一杯愛を与えたいと思う程まで成長していきます。

人を想う事の大切さを教えてくれる作品です。
男の願望を詰め込みすぎてイライラさせられる Date:2009-12-10
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話の展開そのものは面白く、長編だが一気に読めた。
しかし主人公が「男の目線による男の理想」を投影したような人物で、全く現実味に欠ける。

高学歴・一流企業で若くして出世・外見も良くてケンカも強い、そのうえこれまた超美人のご令嬢で料理が上手で尽くすタイプの彼女がいて、さらにひどいことにそんな完璧すぎる(いや、完璧であるからこそ男はそういうのに耐えられないのだろう)彼女をさんざん弄んで、苦悩のうえとはいえ結局は傷だらけの捨て猫のような女を選ぶ。当然だろう、男はたいてい弱い女を守るナイト(騎士)になりたがるのだから。

ひたすら出世街道を歩んできて、ふと立ち止まり今までの行き方に疑問を持つようになり思い悩む主人公の心理描写はとても良いが、どうにも「かっこつけすぎ」が最後まで鼻につく。

この話がそれなりに高評価なのは、このように金も社会的地位も手に入れたからこそ可能な、自分をひたすら頼ってくる女性を、振り回されつつも救ってあげたい!といった願望を持っている男性が少なからずいるという背景があるのかなという気がした。
学生にとって社会勉強になる1冊 Date:2009-12-06
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就活中の自分には、社会勉強になる1冊。
会社や、社会、恋愛の「冷酷な現実」を見せ付けられた。

人間誰もが孤独と不完全さを背負ってる。
それを克服しても、けっして、完璧な幸せなんて、ないんだと思った。
古典になるんだろうなぁ、これ Date:2009-08-19
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トルストイ、ショーペンハウエルに影響を受けた著者の処女作。
「復活」とか「イワン・イリッチの死」を日本語、現代日本の文化で書き換えたらこんな感じ、という作品。しかしただの書き換え以上のパワーを感じる。
ありあまる Date:2009-05-31
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 なんとなく手に取った本作だけれど、未だにどんよりとした余韻を引きずっている。主人公・橋田のこれまでの価値観が揺らぎ、大いなる裏切りと悲劇(?)へと向かう後半のテンポが圧巻で、一気に読み耽ってしまった。

 リアルにそして劇的に進行する大企業の派閥抗争とは裏腹に、人物造形はむちゃくちゃ浮世離れしている。橋田はクールで頭が切れ、長身の二枚目。東大卒で若くして大企業の中枢まで登りつめた超エリートで、ケンカもセックスも強い。もう男からしたらスーパーマンのように「ありあまる」設定だ。彼は周囲の人間を残らず因数分解して、時には暴力や地位を利用して冷徹に切り捨てる。彼が関心のある人物というのは、その「潔癖」な審美眼に耐え得る数少ない有能な人物か、もしくは物語の核となる二十歳そこそこの女の子・香折のように、簡単に読み解くことのできない「ありあまる」過去とパーソナリティを持つ人物しかいない。逆に橋田の、自分の眼鏡に適う人物に対する信頼や愛情は、厚い。

 最終的には、絵に描いたようないい女である瑠衣との未来までも、橋田は見切りをつけてしまう。美人で令嬢で料理がうまく、おまけに性格も良いという、これまたやけに「ありあまる」女を。
 「ありあまる」知性と潔癖さが手を取り合うと、人は独りになってしまうのだと感じさせるラストだった。
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