鳩の翼(上) (講談社文芸文庫)

解説 大原 千代子 , 翻訳 青木 次生
価格: (税込)
出版:講談社
カテゴリ:文庫
ページ:502頁
JAN:9784061975859
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エディターレビュー
 『ねじの回転』などで知られる、19世紀と20世紀をまたいで活躍した大作家、ヘンリー・ジェイムズ円熟期の傑作長編。筋立て自体は実に正統的な、よくあるメロドラマといっていい。しかし本作の最大の特徴は、過激なまでに仔細なその心理描写の、群を抜いた力量にある。あたかも顕微鏡を通してドラマを見ているかのような、人物たちの微細な心の動きをどこまでもすくい取る筆、それによって本作は唯一無二のものとなっている。

   主人公ケイトは、伯母からさる名門出の紳士との縁談を持ちかけられる。彼女は新聞記者の恋人デンシャーを愛しているが、薄給の記者との結婚を案じてもいる。もう1人のヒロインが、裕福だが天涯孤独な、そのうえ病身の娘ミリー。彼女はひそかにデンシャーに想いを寄せ、やがて彼を慕ってアメリカからロンドンにやってくる。すると、この小説の醍醐味、複雑な思惑の交錯がいよいよ本格的に始まる。

   ミリーとケイトがもつお互いへの印象、医者の平和に振る舞う態度と言葉の裏に、死の宣告を聞いた気がしたミリーの動揺、恋人たちの複雑な心情。それらを構成する意識ひとつひとつを、ジェイムズは逐一明るみに出していく。なかでも、ミリーが逢瀬を楽しむケイトとデンシャーとロンドン・ナショナル・ギャラリーで偶然かちあってしまうシーンは圧巻。単なる嫉妬では片づけられない、相反した想念も含めた雑多な混合物としての心理が描きだされる。上巻では全10部のうち、第1部から第6部までを収録。(岡田工猿)

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