牙―江夏豊とその時代

価格: (税込)
出版:講談社
カテゴリ:単行本
ページ:326頁
JAN:9784062108621
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エディターレビュー
   本書は、副題の「江夏豊とその時代」にもあるとおり、江夏豊という大投手に踏み込んだ人物論ではない。江夏はもちろん、有名、無名の選手、関係者へのインタビューを通じて描写した、かつてのプロ野球黄金時代への賛辞というべきノンフィクションだ。江夏をストーリーテリングの軸としたのは、著者が熱心な阪神タイガースのファンであったから。また、当時の花形選手である長嶋茂雄や王貞治ではなく、起伏の多い野球人生を歩んだ江夏をあえて選んだことで、黄金時代の光と影を効果的に浮かびあがらせている。

   冒頭、最新設備のドーム球場で繰り広げられるゲームに、どこか無機的な雰囲気を感じる著者。かつての心躍るゲームに思いをはせるとき、江夏の姿が思い出され、そこから著者の「あの投手への旅」が始まる。著者にとって江夏は、同時代を生きた反体制の象徴であり、ノンフィクション作家を志すきっかけだった。本編では、当時から30年余を経ているにもかかわらず、綿密な取材によって、選手や関係者の泥臭いやりとりや、職人的意識が生き生きと描かれている。それらが、リアルタイムでは浮き彫りにできなかったであろう時代性や、歳月を経た元選手たちのひと言ひと言を、重みをもったものにしている。

   また、各章の端々には著者自身の青年期の思いが重ねられる。だが、過剰な郷愁や押しつけがましさはなく、自己完結にとどまらない読み物としてのエンターテイメント性を十分にもっている。プロ野球ファンにはプロ野球黄金時代の検証として興味深く、そうではない人も、プロ野球を通じて、その時代を見事に描いた著者の視点に興味をそそられるだろう。その読後感は、単なるスポーツノンフィクションの枠に収まらない。(佐藤修平)

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