ひとが否定されないルール―妹ソマにのこしたい世界

価格:¥ 1,575 (税込)
出版:講談社
カテゴリ:単行本
ページ:246頁
JAN:9784062113120
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エディターレビュー
   書物の中には、誰が書いたかが問題になるタイプの書物がある。フィクションであれば、誰が書こうとすぐれた物語(詩)でありさえすればいい。著者の正体が問題にされるのは、内容の真偽と誠実さが、作品の価値にかかわっている場合だ。『ひとが否定されないルール』は、まさにその意味で論議の対象になっている。

   12歳になる重い脳障害の少年がリハビリの結果、優れた詩や文章を書くようになったという「事実」がともなわなければ、本書はこれほど話題になることも、著者が「奇跡の詩人」としてNHKのドキュメンタリー番組で取り上げられることもなかっただろう。

   しかしNHKの番組に対しては「感動した」という声とともに、多数の「本当か」という声があがった。最大の問題は、少年の言葉とされているものが本当に本人の言葉なのかどうかが、映像だけでは判然としなかったことだ。また、ドーマン法というリハビリの有効性にもさまざまな異論があるようだ。

   残念ながら、本書はそうした疑問を解消するものではない。ここに表現されている思考の内容や視点、語り口は、12歳の人間のものとは思えないほど大人びている。といって、そのことだけで本人の言葉ではないと決めつけることはできない。観念的な言葉遣いや考え方は、ドーマン法あるいは両親の教育の産物かもしれないし、彼の年齢と環境を考えれば、両親(とくに母親)の思考方法や語彙をそっくり内面化していてもおかしくはない(そのうえで、内容をどう評価するかは別の問題になる)。

   けっきょくのところ、本書が読者に対して誠実な作品であるかどうかは、本書の内容だけでは検証不可能といえる。語られた内容のそのものよりも、それが示すいくつかの可能性について考えさせられる書物であることは確かだ。(栗原紀子)

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