黄色い本 (KCデラックス)
トラックバックリスト
<!--『チボー家の人々』の主な登場人物。 - オスカール・チボー Oscar Thibault チボー家の当主。カトリック。名声欲と野心のかたまり。 - アントワーヌ・チボー Antoine Thibault オスカールの自慢の息子。医師となる。 - ジャック・チボー Jacques Thibault アントワーヌの弟。一時少年園(少年教護施設)に入れられる。 - 《おばさん》 Mademoiselle de Waize ドゥ・ヴェーズおばさん。チボー家の乳母。 - ジゼール Gisele(Gise) ドゥ・ヴェーズおばさんの姪...
この書籍を買った人はこんな書籍も買っています
エディターレビュー
寡作ながら時代のはやりすたりに流されない漫画を描き続ける、高野文子の4冊目の短編集。モダンで柔軟な絵柄と、ユーモラスかつ静謐(せいひつ)な描写と、高度で緻密な演出。これらが絶妙なバランスで同居する彼女の漫画の中には、さまざまな驚きと発見が隠されている。
たとえばロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々』を題材にした表題作は、読書の醍醐味そのものを再発見させてくれる。主人公の女学生は、流れていく日々の生活の中で『チボー家の人々』をゆっくりと読破する。極端に言えばただそれだけの物語。しかし、だからこそ『黄色い本』には、本を読む習慣のある人間にとってたまらない感動が詰まっている。いい本に出合い、その世界の中に没入して読みふけり、ある種のせつなさと共に読み終える。この一連の流れの中で抱く読者の複雑な気持ちが、さりげないあの手この手によって見事に再現されてゆく様の、なんとみずみずしく美しいことか。
ほかに収録されているのは、縁の不思議を絶妙に描く2つの短編と、オリジナルとは視点を切り替えて描かれた冬野さほの短編漫画のカバー。どの内容も、一度読んだだけではとても味わいきれないほど奥が深い。よく理解できない箇所があっても、描写を手がかりに想像を駆使しつつ読み込めば、見えてくるものがある。そして、ああ、そうだったのか!と一度感動したら、また何度もじっくり読み返したくなる好循環。まさに一生ものの1冊。(横山雅啓)
レビュー
|
大人の為の「漫画」のありようとは。 Date:2010-01-13 おすすめ度 ![]() 近頃では「いい大人が漫画なんて・・・」などという声もめっきり聞かれなくなりました。 それは漫画とともに育ってきた世代が今や社会の中心となった証ですね、きっと。 そんな読者層の成熟に伴って漫画そのものはどう変わってきているんだろうか、本書を読んでそんなことを考えました。 新作が出れば、それが事件となるほど寡作な大御所の作ですが一読、「芳醇」という言葉が自然と浮かんで来ました。 極端にそぎ落とされたシンプルな背景、時に大胆に簡略化され、デフォルメされる人物描写。 逆に恐ろしく凝ったアングルやピンポイントで詳細に描かれるディテール。 ひとコマひとコマに費やされたであろう試行やアイデアを考えると重みが自然と伝わってきます。 しかし本書の一番の特徴はやはりその「語り口」ですね。 誤解を恐れず言ってしまうと、これ「子供」には何が面白いのか分からないのでは? そんな心配をしてしまうほど「物語」の主張が全面に出てこないユニークな作風なのだ。 では物語を支えているのが何かと言えば徹底して「ニュアンス」なのだ。 それがまさに唯一無二の魅力を醸し出しており、結果として時世とは無縁の読書体験を約束してくれる理由ですね。 「黄色い本」: 思春期の女子高校生の読書を通じた「知の目覚め」を描く大作。 時代設定や方言が醸し出すニュアンスで描きだす少女の焦り、苛立ちそして成長の姿。これはもはや「文学」ですね。 CLOUDY WEDNESDAY: わずか10Pの小品。パパの帰りを待つママと二人の幼子たち。ママにまとわりつく子供たちの姿が可愛くも恐ろしくリアル。 マヨネーズ: OLの上島さんとスネウチ君の社内恋愛を描く「ラブコメ」。これが思わず、あるあるっ!と口に出るくらいディテールが超リアル。 ラストは超ほっこり。それにしてもヒロインのたきちゃん、可愛い表情だなぁ。 二の二の六: 高齢者介護ヘルパーの里山さんが訪問した大沢さんちでの出来事。暴走する里山さんの妄想と彼女が熱唱する「昭和枯れすすき」に爆笑。 これほどミニマムな線でなんでこんなに饒舌な表情や動きが描けるんだろ? いやぁ、やっぱ面白いわぁ。 |
|
お気に入りの1冊 Date:2009-02-13 おすすめ度 ![]() 思春期の大人へと成長していく日常をすごく上手に描いています。 大きい淡々と流れていく日常なのですが懐かしく切ない。 この主人公は「チボー家の人々」でしたが、誰でもあるはず。 あの頃の家庭と学校以外での自分の居場所。 本であったり音楽であったり。。 そんな初めての自分の居場所と今までの場所と折り合いをつけていく。 そうして人は少しずつ自立していくのではないかと感じました。 雑多で健全な環境で健やかに育っていく主人公を見ているとなんだか安心できるのです。 高野文子大好きでどれも好きなのですがお気に入りの1冊です。 |
|
珠玉の短編 Date:2007-11-04 おすすめ度 ![]() 表題作の「黄色い本」では、物語に夢中になった時のなんともいえない感覚、 それが見事に表現されていてぐっときてしまいます。 主人公、実地子にとってのジャック・チボーのような存在が 十代のとき誰にでもあるものではないかと思う。 それが人によっては小説であったり、音楽であったり… この作品は、自分がそうして夢中になっていた時間を思い出させてくれます。 そしてそういうおそらく誰にでも経験のある、ごく個人的な感動が 漫画という手法で新たな物語として表現されていることに驚きました。 小説の物語と現実の世界とが交錯する表現は、 漫画だからこそ出来たのではと思うような独創的なもの。 一緒に収録されている短編も、微妙な人間関係のワンシーンを見事に切り取っていて じわじわとした面白さがこみあげてきます。 繰り返し読んでいると、小さな1コマが実は凝っていることに気づいたり。 読み応えのある一冊で、同時にとても愛着のわく一冊。 |
|
まったりとした展開を通して、しみじみと伝わってくるものがある。 Date:2007-07-09 おすすめ度 ![]() いわゆる「高野文子ワールド」を、十二分に堪能できる一冊。 表題作の「黄色い本」のほかに、「CLOUDY WEDNESDAY」「マヨネーズ」「二の二の六」が収められている。 「黄色い本」には「ジャック・チボーという名の友人」という副題が付けられ、言わずと知れた『チボー家の人々』をモチーフに、人生と読書との関わりが幻想的に描かれている。 本を読むということが、人生というものに対して深く関わり、人間の生き方や性向に少なからぬ影響を及ぼし得るものであることが、独特のまったりとした展開を通して、しみじみと伝わってくる。 他の3編も、一見、平凡な人生の一コマを切り取った中に、不思議があり、ドラマがあり、幸せや迷いや、悲喜こもごもの世界が展開し、奥深い。 一読するだけで終わるのではなく、繰り返し味わうことによって、よりいっそう深みが感じられてくる作品集である。 |
|
フランスの芸術映画のような作品集 Date:2007-04-30 おすすめ度 ![]() 表題作は、女子学生を主人公に、膠着した田舎の生活と文学への没入との乖離を描いた作品である。主人公は「チボー家の人々」作中の人物と会話しつつ、現実においても大きな破綻を来すことなく生活している。とりわけ小児期、遅くとも思春期までに特有の心理状態であろう。説明らしい説明のない、理解に苦労する部分の多い作品であり、きわめて文学的ではあるが、ごくふつうの読み手には難物である。これが全体の約半分で、残りにあと3篇。表題作含め、いずれも登場人物の心理の動きが表現の中心である。つまり、事実や事件を追う作品ではない。最初にこのことに気づかないと、わけがわからなくなる。「前に進む」のではなく、「気分を味わう」ことに専心して取り組みたい。 |



