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さよならバースディ (集英社文庫)

価格:¥ 630 (税込)
出版:集英社
カテゴリ:文庫
ページ:382頁
JAN:9784087462951
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で104533位
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レビュー
霊長類学に最近興味があったので Date:2010-01-27
おすすめ度
「霊長類」という言葉は「primates(第一のもの)」という英語の和訳であり、キリスト教的な、ヒトが他の生物に比べて特別なものである、という考えが表れていてあまり好きではない。

かつてヒトのみが行いうる行為(ヒトと他の類人猿との違い)として数十の項目が挙げられていたが、そのうちのいくつかは否定されている。
たとえば現在では、野生において道具を作成するチンパンジーや、ある種の植物を薬として使用するもの、自然火災で生じた火を使用するもの、高度な心理機能といわれる虚偽表示を行うものも確認されているという。

言語の使用もヒトを特徴づけるもののひとつであるが、類人猿も訓練を施すことで手話や文字による言語習得が可能であることは広く知られている。

この本は霊長類研究センターを舞台とし、ボノボのバースディに言語習得プログラムを行う研究者が主人公である。

ひとりの大学院生の自殺を期に、一年前の助教授の自殺、研究所の暗部などを絡めストーリーが進行していく。
彼女はなぜ死んだのか―バースディが見た真相を解き明かしていくミステリーといえる。

理科系の研究が話の重要なポイントになっているが、理系くさい小説ではなく(筆者は理系じゃないし主人公も文学部出身)読みやすい。

ミステリーとしてはやや深みにかけ、先も読めてしまうところがあるが、ラストはなかなか感動的だ。
私は筆者の他の作品も知らないし、そもそもミステリーだと思って読まなかったので面白かった。

解説に、現在の世の中では「愛している」という言葉のリアリティーは失われている、とある。
確かに巷ではやたら「愛してる」と連呼する歌が多いが、本来高尚な「愛している」という言葉がひどく薄っぺらな安っぽい言葉になってしまっていると思う。
だが解説者と同じく私にとっても、この本における「あいしてる」という言葉は真の感動をともなうものであった。
ミステリーとしては☆3くらい Date:2009-11-08
おすすめ度
ミステリーとして考えなければ個人的に文句のない作品でした。
現在荻原作品が本棚に8冊並んでいますが、個人的にはこれが一番です。

「言葉がわかるボノボが中心」という設定にまず驚かされ、
バースディの愛くるしさ、真の熱情、教授陣との確執、岡崎との友情、など、
細かな見所で溢れていて、それだけでも物語として非常に楽しめるのですが、
特に最後の「対話」は圧巻でした。
陳腐な恋愛小説やラブソングが幅を利かせている昨今、
これほど一語一語に重みのある愛情表現はあまり見られないと思います。
久しぶりの一気読みでした。ただただ感動です。

でも、好き嫌いは分かれるでしょう。
荻原さんらしいユーモアを求めてもしっくりこないし、
本格的なトリックを用いたミステリーを求めてもしっくりこないとは思います。
この作品の評価があまり芳しくないのはそのへんのせいではないかなと。
先入観なしに触れてほしい物語です。
「外れない」荻原作品としては、駄作かなあ・・・ Date:2009-08-19
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荻原浩の小説は外さない、と個人的にも強く思ってますし、荻原浩の本を読むときは
「今回はどのように楽しませてくれるのか」期待に胸を膨らませながら読むのですが、
これまで読んだ荻原作品の中では個人的には一番つまらなかったです。

正直なところ、結婚まで考えていた彼女の事を、そこまで知らないのか?と正直呆れ
ましたし、それより何より、最後まで彼女は死ぬほどの理由があったのか、と納得が
行きませんでした。

言葉の分かる類人猿を重要登場人物として起用する、という手法は面白いと思いました
がそれ以上でもそれ以下でもないかな…。個人的に荻原作品のファンなので、どうしても
点数が辛くなってしまう。こんなもんじゃないでしょ!という感じかなあ。
ばー すき ゆき まこ Date:2009-08-08
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多彩な作風を持つ作者が、文字盤を介して人間と会話(100単語程度)出来る「バースディ」と言う名前の天才ボノボをモチーフにした切ない愛情物語。主人公は奥多摩にある霊長類研究センターでバースディを研究する真と言う青年。この研究プロジェクトのリーダは安達と言う助教授だったが、一年前に自殺している。真は研究仲間の由紀と恋人関係にある。プロジェクトの表向きのリーダは野坂という教授だが、マスコミ受けと体面だけを気にしている。野坂の存在は、学界・研究室における権力闘争、閉鎖性、徒弟制度を暗示する。

真が勇気を奮って由紀にプロポーズした晩、何故か由紀はバースディの居る実験室(5F)に戻り、そこから飛び降り自殺してしまう。ミステリ的に考えれば、二つの事件は本当に自殺なのか疑念が湧く。更に興味深いのは、バースディは由紀の事件の目撃者で、その能力を持ってすれば、バースディの"証言"が聞ける可能性があると言う点である。北川歩実氏「猿の証言」を思わせる。真も同じ事を考えるが、由紀の死に動揺しているため、バースディと上手くコンタクトが取れない。この辺、謎解きよりも真と由紀の愛情物語に比重が置かれているようである。ボノボの膂力が人間の何倍もあると作中で強調されている事を考えれば、最悪のケースも想定される。プロジェクト中止の予想の中、真はバースディとの会話に飽くまで固執する。そんな中、真は研究センターの数名が寄付金を着服しているとの噂を聞く。そして、研究センターの窓口理事の口から漏れたのは驚愕の真相...。

研究センターを取り巻く黒い霧の中、バースディ・由紀・真の動物と人間の境を越えた愛情物語が読者の心を切なくさせる秀作。
「一言が重たい」 切なすぎる物語りです Date:2009-06-03
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読み終わったばかりですが、胸が苦しくて切ない。
この作者は、どうしてこんなに人の心を動かすのでしょう。

バースデイはサル(性格にはボノボ)の名前。
話はある大学の「類人猿の言語学習」のプロジェクトチームにて始まります。
主人公の真は、尊敬する安達教授の突然の自殺によって、現場責任者となり推敲を重ねる毎日。
密かに付き合う大学院生の由紀との仲も上々。
意を決した真が由紀にプロポーズした夜、彼女は突然の死を遂げる。投身自殺・・・
真はその現場にいたバースデイから、真相を聞きだそうとするのだが、周囲は真を狂人扱いしていく。
そこに大学という「狭き世界」の不条理なルールと支援金の不正使用が加わって。。。

おそらく読者は途中で犯人が誰か気づいてしまうと思います。
その後「こうならなければいいな」と思いながらページをめくるのでしょう。

このストーリーのポイントは「言葉」と「コミュニケーション」だと思います。
最後に出てくる「あいしてる」が、言語が少ししかわからず、コミュニケーションが非常に困難なボノボから発せられるというところに、このストーリーが凝縮されています。
(人の口から出てきたら軽薄な一言としか思えない現代人の悲しさよ)
そのもどかしさが、この話を深く、深くしていると思わずにはいられません。

すばらしい物語りでした!
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