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神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

価格:¥ 460 (税込)
出版:新潮社
カテゴリ:文庫
ページ:237頁
JAN:9784101001500
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で48976位
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レビュー
表題作について(自由に解釈してみた) Date:2010-02-09
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表題作である「神の子たち〜」の善哉君の出生の秘密についてずっと考えていた。完璧な避妊をしたのになぜお母さんは3度も妊娠したのか?善哉君の父親は誰なのか?神の子とはどうゆう意味なのか

同時に別の一遍である「タイランド」のさつきの身に起こった母親が連れてきた男からの暴力らしきものについても考えていた。
「タイランド」から連想される「タイラント(暴君)」という隠れた意味には否応なく歪んだ暴力の影が見え隠れする。

この二つの話は突然私の中でつながった。

具体的には書かれてはいないが、私は善哉が恐れた母親との近親相関の恐怖こそがそのまま彼自身の出生の秘密を表しているのではないか。だからこそ彼は自らを「神の子だから、だれとも結婚できないんだ」と言い、呪われた因果を断ち切ったのではないか。

村上春樹は震災というテーマを通して今、我々のすぐそばにある止めようのないごく自然な暴力の姿を浮かび上がらせようとしたのかもしれない。
それは止まらない社会システムであったり、緩やかに死に向かう我々の運命であったり、性的な欲望であったりするのかもしれない。それは善きものとして見えたり、悪しきものとして見えたりする。
恐怖として映ったり、美しいものとして映ったりする。それは誰の心の中にも存在すると認めることで、我々は互いを許しあって生きてゆけるのではないか?
他人を許すことは難しいけど、生きていくとは心の交換、交感だと思うから、きっと誰かとわかりあえるはず。この本を読んで私はそう思いました。
短いからこそのよさ。 Date:2010-01-06
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村上春樹の短編集。
いくつかの独立した物語を集めたものですが、どの作品にも「阪神大震災」っていう共通項がある。
村上春樹の短編は、多分、初めて読みましたが、物語の細部の描写や登場人物の心持ちをじっくりと吟味しながら楽しめました。
なぜなら長編と違い、集中力が持続したままで読み終えることができる。
例えば、超長編の第1巻を5分の4くらいまで読んでいて、それが寝る時間の夜12時くらいだったとしても、読み切ってしまいたい性格です。
ストーリーに飲み込まれた感情移入した状態で読んでしまいたいし、結末を早く知りたい。
そうすると、ストーリーに関係ない細部を読み飛ばしてしまうことが多々あるわけで。
短編だとそれがなく、お話の全体をじっくり、ゆっくり読める。
この本の中に、心に寂しさというか悲しさというか、なんとも説明できないようなものを持った二人の人間が、海辺で焚き火をする、って話があります。
そのお話がとてもいい。
生まれたばかりの子馬のようなチロチロとした炎が、天まで届くような大火になり、さらには、闇夜の蛍のような優しげなオレンジの残り火になっていく様を、二人の会話の経過と共に描き出している。
なにか美しい文章です。


個人的には『タイランド』も好みですが Date:2009-12-12
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『アイロンのある風景』
順子に語る三宅の「火が消えて真っ暗になったら一緒に死のう」の後の
「心配するな。火が消えたら寒くなって嫌でも目が覚める」が上手すぎます。
三宅が火を優しさや希望の比喩として見てる(そして順子に対し言ってる)と
考えると、これは三宅なりの生き方指導か。
死にたいと思ってもやはり実際直面する死は寒く怖い。
ここでの焚き火の熱は環境によるもの。つまり周囲から賜る希望。
それが無くなればそのままじっと寝ていては寒い。
だから自身の体内から火に変わる熱を得ねば命を維持できない。
つまり起きる。比喩を解くと、環境から貰える希望など知れるから
自分で希望を作らなきゃいけないということだろう。

『蜂蜜パイ』
本書、唯一の書き下ろしにして最良作。作家の創作への誠実な態度の表れですね。
“淳平”が、いつもの村上春樹の分身的1人称“僕”にかなり近く、親しみを憶える。
熊の“とんきち”“まさきち”の寓話も素晴らしく、何よりラストが良い。
初期三部作の“鼠”や『ノルウェイの森』の“永沢さん”、
『ダンス・ダンス・ダンス』の“五反田くん”や
『国境の南、太陽の西』の“僕”たちの苦悩や内面の相克を
全て当寓話の中に纏めあげ、しかもきちんと光が差し込んでいる。
そこには、短編だからこそ出来る茶濁しや誤魔化しもあるのだろうけど
やはりとりあえずであれ、こういうハッピーエンドは気持ち良い。
様々な自身の分身らに答えを与えた、作者の優しさに満ちたひとつの到達点でしょう。
感激のかえるくんが震災を救う Date:2009-09-27
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 1995年1月の阪神淡路大地震にお願いして、その首謀者及び共犯者に登場していただき、被害者にも題材をとった稀有な作品集である。そんじょそこいらのみんなが、あの震災に感慨を抱きつつ、かつまた悲喜こもごもの風景を慈しみ、しかし同時にうれし恥ずかしく、反面、どっこい楽しめる佳作集に仕上がっているのがなんとも嬉しい。

 みみずくんが地震の元凶であるということをこの作品で始めて知った読者も多かったのではないだろうか。かえるくん、よく頑張ってくれました。

 この前の震災のパロディ形式の小説なんて顰蹙ものと思っている頭の固い読者には、村上小説は理解し辛いんじゃないだろうか。彼の作品は、たとえ「ノルウェイの森」が1000万部売れたとか、200Q年の「1Q84」が発売1ヵ月で200万部も売れたとかといったところで、理解できない者には理解できない。(みみずくん? かえるくん? 何それ?って感じで。)
 極めて小説らしい小説と、個人的には思うが、こんなんじゃあノーベル文学賞にはちょっとなあって感じなのだろうか。
実体のない水 Date:2009-08-22
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村上春樹の短編は苦手だ。
村上春樹の短編を読んでいると、体に力が入らなくなるように感じる。足を地面に踏みしめられなくなるように。ゴムであるべき筋肉がビニールになってしまうように。
もっと露骨な言い方をすれば、インポになってしまったように感じる。
村上春樹の短編の登場人物たちは、けっこうな回数のセックスをするけれど、そこには、欲望や衝動や快楽が引き起こす、”ゆれ”や”ゆがみ”が感じられない。
哀しいほどの静謐さを持って、それはこなされ、人はそこを通り過ぎる。
私の知っている欲望や衝動や快楽はそのようなものではない。

セックスをどう描くかが問題なのではない。
他のあらゆる人や事との相対し方にも、村上春樹の小説は同じ“実体のない水”のような静かさを見せる。
その水を飲んでも、ひんやりと喉が心地よいだけで味はしない。
その水に浸っても、ひんやりと肌が心地よいだけで流されるような圧力は感じない。
でも、かすかな揺らぎを感じる。
自分の体内に入り込んだ水の、細胞膜の中で起こす揺らぎ。

「夢を待つのです、ドクター」とニミットは言い聞かせるように優しく言った。
「今は我慢する事が必要です。言葉をお捨てなさい。言葉は石になります」

言葉は石になります。
小説は言葉で描かれている。
でも、言葉をお捨てなさいと、村上春樹は書く。
だから私たちが読まされているのは、言葉の上澄みなのだ。
本当の”言葉”は書かれていない。
実体のない水の底には、石が沈んでいる。あるいは、かえるくんの体内のようにミミズやムカデが蠢いている。
私たちは、その上澄みを飲まされる。
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