新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫)
価格:¥ 420 (税込)
出版:新潮社
カテゴリ:文庫
ページ:357頁
JAN:9784101092058
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で3520位
おすすめ度:
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レビュー
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銀河鉄道はなぜ南に向かう Date:2009-12-25 おすすめ度 ![]() 本書は童話形式を借りた近代小説である。従って叙述が含蓄する意味は探らねなければならない。 この物語を一種の臨死体験として読むことが可能だろう。親友を失ったジョバンニは悲しみの余り仮死状態となり、カムパネルラと銀河鉄道で再会する。他にも身なりの正しい大勢の客が静かに乗っている。列車は「不完全な幻想第四次」空間の銀河に沿う線路を北十字星から南十字星に向かう。銀河に舞い降りる様々な鳥はそのほとんどが星座名に見ることが出来る。 途中で沈没した汽船で死亡した姉弟と家庭教師の青年が乗ってくる。青年は二人を母親がいる天上に連れて行くのだという。銀河は天国につながる回廊になっているのである。カムパルネラの母も既に死亡している。このことは、天国に行く順番は親から子へといった「正順」であるべきだとの意味を持つ。だが父親は考慮されていない。天国は永遠の安らぎの場としての子宮「回帰」の含みを持つ存在になっている。ジョバンニの母親は病気ではあるが生きており、彼の天国行きは拒否される。 なぜ銀河鉄道は南行するのだろうか。北十字星(白鳥座)では科学者によって化石が採掘されており、進化論信奉を思わせる。だが標本を学校に寄付したジョバンニの父親が嘲られているように、科学万能で人は救われない。救いは別の所にあると語りは暗示する。その方角は南である。 列車が南に行くに従って、賛美歌三〇六番、メサイヤ、新世界交響曲(これをドボルザークの「新世界交響曲」と受け取ってはならない。あくまでも「新世界」を讃える交響曲である)が聞こえてくる。「そんなんでなくてたったひとりのほんとうの神様」が執拗に語られる。たった一人の本当の神様はイエス・キリストであり、裏返せば、キリスト以外の神はすべて偽の神ということである。列車は南方にある聖地イスラエルに向かっているのである。実に唐突だが、ここだけが物語の主が言いたかったことであり、作者の必死の信仰告白であり、他の部分は全てその装飾符だといって良い。 臨死体験は夢のようなものである。だが「地上」に戻ったジョバンニが探すべき「ほんとうのほんとうの幸福」とは、帽子の老人が諭したように、万物が流転する中で変わらないもの、カムパルネラが命を投げ出して友だちを救った愛、家庭教師が他の乗船客を救うために自らをあきらめた愛、つまり自己犠牲の「愛」であることだけは確かである。 |
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すべてのいきものへの優しい眼差し Date:2009-08-23 おすすめ度 ![]() 名作「銀河鉄道の夜」他、「よだかの星」「シグナルとシグナレス」など全部で14編を収録。 すべてのいきものはみんなきょうだいで、「カイロ団長」の言葉を借りて言えば「すべてのいきものはみんなかあいそうなものである」、みんなの「ほんとうの幸い」を願うという、宮沢賢治の優しさに溢れた中短編集です。 本書の中心を成す「銀河鉄道の夜」(本書では第四次稿までの全てを参考にしています)には、その賢治の、世界に対する真摯さみたいなものが本当に強く描かれています。病弱の母と暮らすジョバンニは、ケンタウル祭の夜に、気がつけば親友のカンパネルラと乗っている。そこで様々な人々や情景と出会うという、あまりにも有名な物語。水の無い銀河の「水素よりもとうめいな」美しさを始め、全てが何かの暗喩のような、賢治独特の感性で綴られた、自己犠牲と原罪を問うた日本童話の金字塔。必読です。 今から約100年も書かれた作品にしては読みやすい物語だと思います。ルビも結構振ってあるし。 学生さんの読書感想文などにもオススメ。 |
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星に願いを Date:2008-10-14 おすすめ度 ![]() 『ぼくはおっかさんが、ほんとうに幸いになるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸せなんだろう。』 『けれども、誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸せなんだねえ。』 「…もうこの人のほんとうの幸いになるなら自分があの光る天の川の河原に立って百年つづけて立って鳥をとってやってもいいというような気がして…」 『僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。』 『けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。』 こんなフレーズが度々出てくる。36歳で早世した賢治の終生変わらぬテーマだったのだろう。 皆の幸せに役立つことをしよう、世の中を少しでも良くするために生きたい、とはおそらく幼い頃は一度は考えることだと思うが、これを持続していくことはとても凄いエネルギーが要るはず。恐らく、今の時代はなおさらに…。 「銀河鉄道の夜」以外も「よだかの星」や「セロ弾きのゴーシュ」など佳編が多い。自身の子供が大きくなったら読ませたいと思うが、これはむしろ、大人が読むべき童話、というか寓話集だろうと感じた。 |
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宮沢賢治の世界 Date:2008-04-16 おすすめ度 ![]() 私は恥ずかしながら37年間生きてきて始めて宮沢賢治を読みました。今まで宮沢賢治の本を読まなかったのは余りにもメジャー過ぎる事と、宮沢賢治=児童が読む童話というイメージを勝手に植えつけていたためです。実際に銀河鉄道の夜をはじめ本書にある短編を読んで強く感じた事は「宮沢賢治の世界」というものです。宮沢賢治でなければ描く事のできないワールドです。私は本書の各短編に興味を持つというより、宮沢賢治そのものに大変興味を持ちました。どうしたらこのような優しい気持ちになれるのか?このような美しい世界を想像する事が出来るのか?どうしたらすべての生きとし生けるものに対して無条件の愛情を注ぐ事が出来るのか等々。いつの間にか汚い大人になってしまった自分を反省させられる本でした。 |
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子供の頃、見上げた星空の郷愁 Date:2008-03-23 おすすめ度 ![]() いわずと知れた宮沢賢治の代表的な作品。短編集で他にもいくつか作品が収録されていますが、何といっても白眉なのは「銀河鉄道の夜」でしょう。 いじめられっ子のジョバンニと彼が憧れてやまない少年カムパネルラ。学校帰り、土手でうたた寝してしまったジョバンニは、目が覚めると、美しい光景をわたっていく「銀河鉄道」の中に、カムパネルラと共にいた。二人は優しい、もの悲しげな人々と出会い、美しいがどこか恐ろしい星空と宇宙の物語に出会う。目覚めた時、ジョバンニが直面する現実は…… 子供には夢を見る才能があって、夢には翼がついていた。空想と夢で、どこまでも瞬時に羽ばたくことができた。そんな時期が終わりを告げる頃は、生きていくことの意味や、友人がいても最後は一人で選んで決めて、道をつくっていかなければいけないことを知り始める時期とオーバーラップする。そんな少年期の、刹那の夢と友情が、儚く綺麗です。 大事な人との別れに直面した時、読みたくなる本です。美しい星空は何もかもを包み込み、人間の短い人生もまたその中で刹那の時間輝くまたたきのようだと感じます。 そして勿論、銀河鉄道の行路となる光景が、すばらしく美しいです。 |

