女神(じょしん)

価格: (税込)
出版:新潮社
カテゴリ:単行本
ページ:199頁
JAN:9784104101078
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エディターレビュー
   昭和文壇の裏側を風のように駆け抜けた女性がいた。坂本睦子、通称ムウちゃん。小林秀雄、中原中也、坂口安吾、大岡昇平、青山二郎など、才能あふれる無頼な文士たちに愛され、求められ、そして自死を選んだ実在の女性だ。銀座のバーに勤めていた彼女は、透けるような白い肌と魔性の美貌、そして童女のような無垢なあどけなさで、多くの文壇の住人を虜(とりこ)にし、多くの作品のモデルともなったが、ついにはだれのものにもならず、そしてひとり旅立つのだ。

   久世光彦は、1935年東京生まれ。東京放送(TBS)を経て、ドラマ演出家として「時間ですよ」「向田邦子ドラマシリーズ」などの代表作を手がけた。小説家、エッセイストとしても活躍し、94年『一九三四年冬―乱歩』で山本周五郎賞を受賞。人間の深い心模様や情念、昭和の風物を叙情豊かに描き、その匂い立つような文体で独特の世界を構築している。

   本書も、まるで女流作家が手がけたかのような細やかさと艶(あで)やかさが際立つが、テレビの世界から培った人物描写の確かさが、円熟味を伴ってふくよかに醸造されている。あふれる才能と愚直な愛らしさをあわせもつ、どこか滑稽(こっけい)な文士たちの人間臭さ、そして慈悲あふれる釈迦や観音のように彼らを包み込み、底なしの深さと温かさをたたえるヒロイン、ムウちゃん。あたかも著者の理想像のように描かれていく彼女だが、『女神』という最大級の賛辞を内包したタイトルは、そんなムウちゃんにこそふさわしい。(田島 薫)

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