ホワイト・ティース(上) (新潮クレスト・ブックス)

翻訳 小竹 由美子
価格: (税込)
出版:新潮社
カテゴリ:単行本
ページ:365頁
JAN:9784105900236
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エディターレビュー
   この小説について話す前に、まずは作者のゼイディー・スミスを紹介しなければならない。1975年、ロンドンでイギリス人の父とジャマイカ人の母との間に生まれている。ケンブリッジ大学在学中に破格の契約金を得てこの小説を書いたこと、ラシュディが絶賛したこと、移民の血を引くうら若き才媛は話題に事欠かない。新しいミレニアムを迎えて、最も注目の作家と言ってもいいだろう。

   物語の核には、ロンドンの下町っ子アーチーと、バングラデシュ出身のイスラム教徒サマードの半世紀にわたる友情がある。2人を巡る物語は時代や舞台を越え、種々雑多な人種、文化、宗教、言葉が絡み合いながら展開する。イスラム原理主義者、エホバの証人、レズビアン、遺伝子工学者、動物愛護主義者などが次々と登場し、ときにスミスの描く人物は過剰なほど個性的だ。しかし、この小説に描かれたディテールのすべてが、現在のロンドンに確実に存在していると言えよう。イギリスは、複数の異文化が軋轢(あつれき)と融和を繰り返しながら、新しい形の豊かな文化を作りだしている。この作品にも描かれた多様性こそが、活況を呈す「クールブリタニア」の原動力にほかならない。

 「ハイソ」なガーデニングやアフタヌーンティーではなく、リアルなイギリスを感じたい人におすすめの1冊だ。ビートの利いた現代的な叙事詩とでも言おうか、コミカルな表現にところどころ笑わせられながら、一気に読み進めることだろう。やや唐突な感じのするエンディングに物足りなさも感じるが、ここまでのプロットとディテ―ルを24歳にして書ける作家である。近い将来、彼女は更なる傑作を生み出すことだろう。お楽しみはこれからだ。(齋藤聡海)

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