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「心の傷」は言ったもん勝ち (新潮新書 270)

価格:¥ 714 (税込)
出版:新潮社
カテゴリ:新書
ページ:189頁
JAN:9784106102707
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で193810位
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 【読後感】 「心の傷」は言ったもん勝ち [ 別冊 社内報 ] at 2008-09-30 11:13:05
「心の傷」は言ったもん勝ち 中嶋 聡 / / 新潮新書 芸能人が安易にPTSDを持ち出すと、本当にこの症状で悩む人々が詐病扱いを受けるのではとワイドショーを見ながら心配しております。 本書では、朝青龍の症状をまっさきに取り上げました。世の中の多くが思っていることを、精神科の先生が代弁してくれるところに、この本の価値があります。 生徒が「傷ついた」と言えば先生はうろたえ、電車で女性が「触られた」と言えば警察は問答無用で逮捕に走る。医師がインフォームドコンセントを徹底しても、患者が「聞いてない」「不親切だ」と言えば医療過誤に。 弱者を守るのは当然。それを過度に扱うかどう...
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レビュー
主張はわかるが、意図しない批判にさらされそう Date:2009-11-13
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現役の精神科医が、昨今の朝青龍騒動、増加する心の病、セクハラ、医療訴訟などを例に出し、安易に「心の傷」を主張して被害者利益を得ることがまかり通る現代に警鐘を鳴らし、精神力を鍛えましょう、と主張する本です。

これらに共通するのが、心の傷を受けたことの検証手段が被害者本人の供述以外に無いことと、行き過ぎた人権運動によって、被害者の声が無批判に受け入れられてしまうこと。この実態を著者は「被害者帝国主義」といって糾弾します。

導入部と結論には共感できるのですが、果たしてセクハラや医療訴訟の問題まで手を広げる必要があったかは疑問。ここに触れるがために、フェミニストや人権派を自称する人々からの、それこそ本質を見ない批判にさらされそうです。

現代社会のひっかかりが解けた感じ Date:2009-11-04
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最近、自己主張の強い人がふえたと感じることが多くなった。一人一人が考え・意見を言える場面がふえ、何となく「言ったもん勝ち」の風潮が強まり、"超民主的"とでもいうべき事態が多くなってきたように思う。著者の視点はそんな風潮から見れば、かなり危険性を伴っているかもしれないが、現代社会の構図を非常によく捕まえているように感じられた。既に投稿された本書に関するブックレビュー評価が、大きく分かれていることからも、とてもデリケートでビミョーな部分を抉り出しており、「被害者帝国主義」「『傷ついた』の万能性」といった表現は、読み手の中にはショックを受ける人もいるかもしれない。しかし一方で、ここに書かれている状態を知らず知らずのうちに許容している社会システムにも、冷静な目を向けるべきではないかと思う。(ブックレビューでは)賛否両論が渦巻く本書だが、それだけのインパクトを与える内容が書かれている証左だと評価したい。
根性主義の精神医 Date:2009-09-06
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 著者は受験生時代、英単語を覚えるのに、辞書のAから順々に覚えていったとのこと。
 普通だったら、単語帳で効率よく覚えるだろう。
 そこを辞書でAから順に覚えるので、誰も知らない難しい単語を知っている割には、辞書の最後の方の単語は何も知らないと豪語する。
 他にも過労死した学生時代の同級生の持ち上げ方などを読むにつけ、著者が最も価値をおいているのは、「根性」とか「努力」とか、その類のものであることが分かる。

 そのような根性主義者が、「私は傷ついた」とか言ってくる患者さんとソリが合わないのは、ごく自然のことだ。根性主義者は根性で乗り越えようとするので、立場が逆なのである。
 しかし、そのソリの合わなさは著者の根性主義に由来すること、つまり、著者個人の問題なので、果たして「被害者帝国主義」と一般化できるのだろうか、という疑問がつきまとう。
 著者の主張は「傷ついた、傷ついた」と騒ぎ続ける奴はウゼぇんだ!、この一言に尽きると思うのだが、「被害者帝国主義」などという汎用的な言葉を安易に用いるので、傷つくこと自体、また被害を主張すること自体を良しとしないところにまで射程が及んでしまう。そしてそれは不健全だ。

 私が本書で忘れられないのは、強姦された女性についての「症例」である。
 診察を重ねたある回の診察で、突然「もう忘れなよ」と患者に言ってのける。
 私は男性だが、強姦された女性に「忘れなよ」などと言えるほど無神経ではないし(いくら良好な関係を築いたとしても)、あわれみの気持ちも持ち合わせている。
 だから、専門家としての著者の姿勢には、ただ唖然とするほかない。
 このような「症例」を得々と書いてしまえるのも、私には理解できない。

 この本の読者想定層は根性主義者、努力至上主義者で、こういう方々であれば本書に共感できるかも知れない。
 一方で、そうではない人は、著者とは価値観が全く異なるので、自身の価値観のみに基づいて思うところを書き連ねた本書には大きな違和感が残るだけだろう。英単語の暗記の仕方を工夫する人には、お勧めできない。
 その違和感の中でも最大のものは、精神科医がこんなこと書いていいの?というものであり、これは本書出版当時にいくつかのメディアがオブラートに包んで書いたことである。
弱者が弱さを強調するに潜む暴力性 Date:2009-08-16
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思っていても言いにくいことを論じた勇気ある本。

心の傷が(もし嘘であっても)反論不可能という議論を踏まえた、セクハラに関する議論が本書の白眉で、示唆に富む。心の傷と同様で、セクハラも「被害者がそう感じたらセクハラ」(痴漢もこれに近似的)となる。著者はこの状況を憂慮している。セクハラを政治的な謀略に利用して敵を陥れるのはたやすい。人は気軽にジョークもいえない。いえば「それセクハラ」などと、この語を錦の御旗として非難してくる。その発言のなされた文脈や状況なんかおかまいなしだ。著者の言うとおりじつに息苦しい。

映画で男性がきわどいことを言って「あ、それセクハラ」なんて女性が反応するって場面なんてみたことないね。仮にあるとすると、その瞬間に映画館を飛び出すけどね。盾のように「セクハラ」を使うのは、まるで暴力。弱いし、貧しいし、美しくない。もし不快に感じたら、自分の言葉で反撃しようよ。

ニーチェはかつて、弱者であることを強みに転化しているとしてキリスト教を批判したが、本書がいう「被害者帝国主義」はそれとほぼ同じ線でとらえられるものである。弱者が自分の弱さを強調するがゆえに、それがたちの悪い暴力に(知らぬうちに)なっている場合があることだけは知っておいてもよいと思う。「それセクハラ」のなかに、「弱い私に何するのよ」という弱さを武器にした暴力性があることを。

(注意:深刻な心の病の人やセクハラの被害者のつらさを疑っているわけではありません)
社会病理への中嶋処方! Date:2009-07-08
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やっぱ凄い!前作の『ブルマーはなぜ消えたのか』といいこの作品といい、中嶋聡はあえて背理的な命題を社会に突きつけながら、得られた批判の中にある本質を見抜こうとしているのだ。これは単なる評論本ではない。十分に仕掛けられた社会病理への処方箋だ。
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