ずぶぬれて犬ころ

価格: (税込)
出版:中央公論新社
カテゴリ:単行本
JAN:9784120032721
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エディターレビュー
   空色の地に、胴の短いとぼけた顔の犬と水たまり、その犬を見つめる少年と遠くに白い雲が線描きされた表紙。少年の首に巻かれた赤い布が妙に目をひく、小さな絵本のような俳句版画集。

   句の作者は住宅顕信(すみたくけんしん)という珍しい名前の俳人。彼は浄土真宗本願寺派の僧侶だった。1961年岡山市に生まれ、1987年白血病で死去。享年25歳。短い句作人生を全速力で駆け抜けた。

   種田山頭火や尾崎放哉の句を愛し師とした顕信は、5・7・5の定型や季語にしばられない、自由律俳句をつくった。発病してから逝去までのわずか2年数か月に詠まれた全281句から、51句が選ばれ本書に収められている。タイトルの「ずぶぬれて犬ころ」ももちろん彼の句。わずか9文字に込められた顕信のおののき。ページを開けば、ぶっきらぼうを装う、裸の心が詰まった短詩の数々が、防ぎようもなく直に読者の胸をたたく。

あけっぱなした窓が青空だ
初夏を大きくバッタがとんだ
若さとはこんな淋しい春なのか
点滴と白い月とがぶらさがっている夜
重い雲しょって行く所がない

   松林誠の版画は、子どもが描いたパステル画の趣で、無邪気と同時に、寂しさ、疲れ、ユーモアなども醸し出している。版の汚れをそのまま取り込む現代的な手法が、死後15年を経てなお、顕信を現在に新鮮によみがえらせる大きな効果を上げている。(中村えつこ)
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