論文捏造 (中公新書ラクレ)
価格:¥ 903 (税込)
出版:中央公論新社
カテゴリ:新書
ページ:333頁
JAN:9784121502261
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で14113位
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レビュー
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シェーンはいったいなぜ捏造を犯したのか? Date:2009-11-18 おすすめ度 ![]() 本書は、様々なシェーン事件の関係者への取材を元に執筆されている。 その取材先の一人が、シェーンの研究チームのリーダーであった、バートラム・バトログ(事件当時、ベル研究所・固体物理学研究部門のヘッド)であり、事件発覚後、バトログがマスコミの取材に応じたのはこれが初めてのことだと言う。 このバトログへのインタビュー取材により、彼が事件発覚前後においてシェーンをどのように認識していたかが彼自らの口から告白されている。しかし、その告白の内容は真実を語るというよりは責任を逃れるために発せられたもののように感じられた。 また、シェーンの「酸化アルミ膜を載せた有機物における超伝導」の発見の再現追試に挑んだ研究者である大阪市立大(当時)の谷垣勝己教授、京都大学(当時)の石黒武彦教授、パリ南11大学のデニ・ジェローム教授、ミネソタ大学のアレン・ゴールドマン教授などにも取材し、シェーン捏造事件発覚前の時点における彼らの苦悩が詳細に明かされる。それに続く、内部告発者、マキューエン、ゾーン等による捏造発覚までの過程も彼等のインタビューを元にドラマチックに描かれていて面白い。 一連の取材の中でも特に、シェーンの捏造論文が掲載された一流科学誌である「ネイチャー」や「サイエンス」の編集部への取材は、彼ら編集部が「論文審査システム(ピアレビューシステム)は不正行為を見破ることはできない。」と開きなおりの態度を見せていることなどを明らかにしてくれており、興味深い。 しかし、残念なことに、肝心のシェーンへの取材は本人により拒否されており、シェーンの親友であるフェスに対する取材を通してでしか、シェーンの本質を探れていない。 いまだ、シェーンが一体なぜ捏造を犯したのか? シェーンだけが悪者なのか? なぜ捏造は防げなかったのか? などは謎のままである。 シェーン事件の後も、ファン・ウソク教授による韓国ES細胞事件や、松村秀一研究室のアニリールセルカン事件(http://blog.goo.ne.jp/11jigen)など科学界における捏造事件は後を断たない。現代の科学は、専門化・巨大化・成果主義化・利益主義化しており、研究不正行為を防げなかった構造的問題、研究不正行為に対する責任の所在問題など、難問が山積みである。最先端科学では再現追試実験自体が困難であり科学の定義そのものに矛盾するものとなってきており、シェーン事件は、研究不正行為とは無縁と信じられてきた物理学でさえ対策が必要であるという警笛を鳴らした事件といえよう。 |
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最近読んだ中で最も面白かった一冊 Date:2009-07-12 おすすめ度 ![]() 社会科学系の研究者です。専門外の超電導を果たしてどの程度理解できるか不安を抱えながら読み始めましたが、時間を忘れ読みふけり、結局一晩で読み終えその後も繰り返し読んでいます。研究とは無縁の方にも必ず面白く役に立つ一冊だと思います。まるでサスペンス小説のように事実に迫っていくスタイルに時間を忘れました。著者の取材力、構成力、筆力に脱帽です。このドキュメンタリーを見たくてたまりません。そして邪推かもしれませんが、もしや放送できず、ここにも書けなかった真実に取材チームは迫っていたのではないだろうかという気がしました。さすがNHK、時間とお金、そして優秀な人材をふんだんにつかった素晴らしい作品です。 |
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読み進めずにはいられない Date:2009-01-18 おすすめ度 ![]() 物理学に詳しくなくても、一人の若者が罪を犯し、栄華を極め、そのすぐ後に転落していく様がスリリングに味わえる。その時々のシェーンの心の内が、勝手に伝わってくる良作。 ひとつ、納得がいかない点。 著者は「権威ある科学ジャーナルがその内容を保証していないなど、誰が想像するだろう」というような内容を書いてあるのだが、科学者は内容が保証されているわけではない(レビュワーとエディターの目を通しているだけ)ことを織り込み済みで論文を読んでいるはずである。それがサイエンス、ネイチャーなら、なおさら。 |
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超一流のドキュメンタリー作品 Date:2008-10-22 おすすめ度 ![]() 本書は、若きドイツ人研究者シェーンがベル研究所で起こした空前の論文捏造事件を追い、数々の賞を受賞したNHKドキュメンタリー「史上空前の論文捏造」を、番組で紹介できなかった資料などをふんだんに用いつつ文章化したものです。超伝動の新たな記録でネイチャーやサイエンスに矢継ぎ早に論文を掲載し、科学界に彗星のごとく現れたシェーンを巡る壮大な不正行為の裏側にじっくりと迫っていくのですが、(読み手が研究者であってもなくても)そのスリリングな展開に読み出したらとまらなくなること間違いなしの名著です。 |
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科学論的な、あまりに科学論的な・・・ Date:2008-09-01 おすすめ度 ![]() 高温超伝導学界を揺るがせた「シェーン事件」。その全貌を明らかにした本書は真に労作と言えるでしょう。とりわけ科学論(STS)を勉強している者には必読の内容であることは間違いありません。筆者ら取材陣たちは学界が3年もの間捏造を見破ることができなかった理由を世界中の関係者たちへのインタビューを通じて明らかにしてくれます。 本書中に見出した捏造の理由の数々はどれをとっても「やはりそうだったか・・・」と思わずにはおれない科学論の世界では周知のメカニズムの数々でした。ただし「捏造のメカニズム」ではなく「通常の研究活動における事実構築のメカニズム」です!現代科学論を切り拓いてきた研究者たちは実験室に入り込み科学者の研究活動の実態を観察分析し、数々の発見をしてきましたが、シェーンの論文を信じた科学者たちの証言する理由はことごとくそれらの発見とピタリと重なっているのです。 シェーンの実験を再現できないのは彼が何か言葉にしにくい秘訣、手わざのようなものをもっているからだろうと科学者たちは考えたというが、それはまぎれもなく科学論ではおなじみの「暗黙知」。科学哲学者ポラニーにより提唱され、後年科学社会学者コリンズによりいっそう具体的な形を与えられた概念にほかなりません(Changing Order: Replication and Induction in Scientific Practice)。そうした個々の研究者のもつ「暗黙知」と実験成功の切り離し難さを科学者たちが認識しているがゆえに再現実験は本質的に困難な所業なのだということを自覚してもいるということ。それこそが捏造を見破ることを困難にしたひとつの原因であった。 もうひとつ極めて重要な要因があった。それはシェーンの研究のバックには超伝導研究の世界では第一人者とされるさる高名な人物の存在があったこと、さらにはシェーンの所属がこれまた高名なベル研究所であったこと、である。これらシェーンの帯びた「権威」が、科学者たちをして彼の論文を信用せしめ、長く不毛な再現実験に執着させてしまったのである。この事実もまた科学論ではおなじみの現象である。事実の構築とは信頼の構築であり、権威もまた重要な信頼構築の手段となる。 本書が明らかにしてくれた諸事実の科学論の諸洞察とのあまりの符合ぶりには目を見張るものがあり(科学の現実を分析するのが科学論なのだから当たり前ではあるのだが)、その意味で「シェーン事件」は「科学論的な、あまりに科学論的な」事件であったと思わずにはおれない。科学者たちから「科学の客観的性格を蔑ろにするものだ」と多大な反発を受けてきた現代科学論ではありますが、誰が何と言おうと、本書が教えてくれたこの史上空前の捏造事件の生じたメカニズムは現代科学論の洞察が疑いもなく正しいことを証明しているのです! もちろん本書で明らかにされた諸事実が全て科学論の既存の知見の枠内に収まってしまうなどと言うのは不遜であって、知られていなかった新しい事実もひとつあったと思います。それはシェーンがなぜ遅かれ早かれ破滅が確実に訪れるように思える捏造に手を染めたのかというシェーンの心理に関しての疑問をめぐる著者の推定部分です。著者の推定は私の推定と同一の推論に帰着していたので思わず納得でした。これはこと物理学のような科学では論理的にはありえると直観していたことだけに現実にもありうるものなのかずっと気になっていたことなのでした。ポイントは「非常に才能がある研究者は捏造しても永遠に気付かれない可能性が十分にある」。それはなぜか? 謎解きは本書を読んで確認されたし。 |

