さよなら、愛しい人
翻訳 村上春樹
〇「さよなら、愛しい人」 レイモンド・チャンドラー 早川書房 1785円 2009/4 [ 「本のことども」by聖月 ] at 2009-11-05 08:41:31
勿論、村上春樹新訳ということで手に取ったわけで、清水俊二訳『さらば愛しき女よ』を未読の評者としては、その新訳の妙味を語ることは叶わないが(いや、読めば叶うのはわかっているんだけど、新訳と旧約とふたつも読む気力は聖書といえどもない私です)、本書より後に描かれたマーロウ物『長いお別れ』清水俊二訳は読んでいるので、そこのところでの違いを感じて語ることはできる。 『長いお別れ』のほうのマーロウは、中年の悲哀みたいなものを身に纏い、多くを語らず、信念をあまり表面に出さずに行動していたが、本書のマーロウはまだ青臭い感じがする。自分の利得を考えずに行動する根幹の部分は変わらないのだが、事件自...
価格:¥ 1,785 (税込)
出版:早川書房
カテゴリ:単行本
ページ:375頁
JAN:9784152090232
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で64457位
おすすめ度:
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勿論、村上春樹新訳ということで手に取ったわけで、清水俊二訳『さらば愛しき女よ』を未読の評者としては、その新訳の妙味を語ることは叶わないが(いや、読めば叶うのはわかっているんだけど、新訳と旧約とふたつも読む気力は聖書といえどもない私です)、本書より後に描かれたマーロウ物『長いお別れ』清水俊二訳は読んでいるので、そこのところでの違いを感じて語ることはできる。 『長いお別れ』のほうのマーロウは、中年の悲哀みたいなものを身に纏い、多くを語らず、信念をあまり表面に出さずに行動していたが、本書のマーロウはまだ青臭い感じがする。自分の利得を考えずに行動する根幹の部分は変わらないのだが、事件自...
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レビュー
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「大鹿マロイ」と「ムース・マロイ」 Date:2009-08-08 おすすめ度 ![]() 村上春樹が「The Long Goodbye」に続いて「Farewell, My Lovely」を翻訳した。熱烈なチャンドラーファンの私も早速読んだ。日本人のほとんどのチャンドラーファンは英語に堪能な人を除けば、清水俊二の翻訳を通じてその作品に親しんでいると思う。私も例外ではない。つまりこの村上訳も清水訳と比較される運命にある。結論から言うと村上訳は清水訳に惜敗である。 まずタイトルの「Farewell, My Lovely」を「さらば愛しき女よ」とした清水訳は、ちょっとマヌケな村上訳のタイトルを見るに及んで、さりげないが凄いセンスであることが今になってよく分かった。そして「moose」という語はどの英和辞典でも「へらじか」としか訳語がついていない。米国ではデカくてタフな男に「moose」というあだ名をつけるのはフツーのことらしいのだが、わが国にはいない生き物なので、馴染みがない。だから「moose malloy」に「へらじかマロイ」と訳語を当てても、ただマヌケなだけだが、これをあへて「大鹿マロイ」とした清水訳はあっぱれとしか言いやうがない。これを拝借するわけにはいかない村上訳は、苦肉の策で「ムース・マロイ」となるのだが、これもなんだか力が入らない名前だ。 これら二つの訳語のセンスだけでも清水訳の勝ち。そして文体も、キビキビした正統派ハードボイルド調の清水訳に対して、村上訳はややユルイかな。プロの翻訳家とそうでないひとの差は、実は歴然たるものがある。さらに重箱のスミを突っつかせてもらうと、第35章305pで、ブルーネットに会うためにボートに乗り込む件で「麻でできた緩衝物に云々」という文章がある。この緩衝物を船舶用語では「防舷物」と呼称するはずであるが、こんな言葉も知らずして・・・と、やや絶句。因みに清水訳ではこの部分は省略されている(笑)。 とは言え、村上氏はあとがきで「チャンドラーのある人生と、ない人生では確実にいろんなものごとが変わってくるはずだ」と述べているがこれは的を得た指摘であろう。清水訳を読みつくしているチャンドラーファンは、この当代一流の人気作家がいかにチャンドラーを料理したのかを、味わってみる価値は本書には十分にあると思う。 |
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