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グロテスク

価格:¥ 2,000 (税込)
出版:文藝春秋
カテゴリ:単行本
ページ:536頁
JAN:9784163219509
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 ◎◎「グロテスク」 桐野夏生 文藝春秋 1905円 2003/6 [ 「本のことども」by聖月 ] at 2006-01-09 20:14:11
 ふう。6月24日から鹿児島に逆出張をして、自宅から仕事に通えるのはいいのだが、今回のビジネスの場合、朝5時半には起きて早めに行き、夜は帰宅が10時過ぎという状況で、そこから缶ビール350ML2本飲んで焼酎お湯割り4杯飲んで酔って寝て起きたら仕事というありさまで、本は読めないわ、娘たちとの時間は持てないわでずっと来て、だが昨日その仕事も無事終了し、やっとお休みの今これを書いている7月11日なのである。セブンイレブンなのである。で、なんでやっとのお休みで、朝からこうやって文章なんか綴っているのかというと、娘たちと遊ぼうと思ったら、片方はピアノ、もう片方は算盤と、日曜の朝から自己研鑽されてい...
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エディターレビュー
 『OUT』 『柔らかな頬』など、単なるミステリーにとどまらない作品を生み出してきた桐野夏生が、現実に起きた事件をモチーフに新たな犯罪小説を書き上げた。自身をして「その2作を超えて、別のステージに行ったかな」と言わしめた作品だ。

   主人公の「わたし」には、自分と似ても似つかない絶世の美女の妹ユリコがいた。「わたし」は幼いころからそんな妹を激しく憎み、彼女から離れるために名門校のQ女子高に入学する。そこは一部のエリートが支配する階級社会だった。ふとしたことで、「わたし」は佐藤和恵と知り合う。彼女はエリートたちに認められようと滑稽なまでに孤軍奮闘していた。やがて、同じ学校にユリコが転校してくる。

   エリート社会に何とか食い込もうとする和恵、その美貌とエロスゆえに男性遍歴を重ねるユリコ、そしてだれからも距離を置き自分だけの世界に引きこもる主人公。彼らが卒業して20年後、ユリコと和恵は渋谷で、娼婦として殺されるのだった。

   いったいなぜ、ふたりは娼婦となり、最後は見るも無残な姿で殺されたのか。そこに至るまでの彼女たちの人生について、「わたし」は訳知り顔で批判を込めて語っていく。しかし、ユリコと和恵の日記や、ふたりを殺害した犯人とされる中国人チャンの手記が発見されるに従い、主人公が本当に真実を語っているのか怪しくなってくる。つまり「わたし」は「信用できない語り手」だということが明らかになってくるのだ。その主人公に比べ、日記であらわになるユリコと和恵の生き様は、徹底的に激しくそして自堕落である。グロテスクを通り越して、一種の聖性さえ帯びている。

   読み手は何が真実か分からなくなるかもしれない。しかし読み終わったとき、この物語に不思議な重層性を感じるだろう。(文月 達)

レビュー
この半端ない重みに圧倒される Date:2010-02-09
おすすめ度
文章のみで、人をこんなに物語の中に飲み込ませる力が発揮できるとは、本当に凄いとしか言いようがありません。
和恵に、思わず共感してしまう所もあり‥‥夢中でページを捲りました。

この小説に漂う重すぎる空気や迫力に、耐えられない方もいるだろうなとは思います(笑)。
しかし、こんな小説は他にないのではないでしょうか。
私は軽い気持ちで読み始めたのですが、この物語に出会えたことはいい"経験"であったと捉えています。オススメです。
発想が凡庸… Date:2010-02-05
おすすめ度
東電OLの事件当時、マスコミが被害者の女性を男性(あるいは男性社会)との相対で語っていることに少し強引さを感じていたのだが、本書でも同じような印象を受けてしまった。
登場人物の女性たちが抱えるコンプレックスの数々は男性にも当てはまるものだし、ここで描かれる階級差や組織での孤立といったものも女性特有のものとは言えない。また、ユリコのキャラクターは、その美貌ゆえ男の存在なしでは成り立たないかのように描いているが、いくらなんでも誇大が過ぎるだろう。著者なりに事件を紐解こうという意欲は伝わって来るが、切り口は先のマスコミと大差はない。終盤の「肉体地蔵」というパートだけは実際の事件のトレース部分が大きな役割を果たしているため読ませるが、逆に言えば事実の凄みだけが際立ってしまった。好きな作家だけに残念。
複雑・・・ Date:2010-02-02
おすすめ度
所感は、他の方が書かれている事とほぼ変りませんが、ひとつだけ。

実際に起きた事件がモデルになっている部分がありますが
実際の被害者のご遺族のお気持ちを考えると
主人公の悪意のある目線から描かれた和江の印象や和江の日記の記述は
どのように受け止められるものなのだろうか、と複雑に感じられました。
実際の被害者は既にお亡くなりになっているため、忌憚無い言葉で表現すれば死人に口無し状態ですから
愛のある視点での描写(もしくはあとがきなどでのフォロー)も欲しかったかな・・・。
桐野さんは大好きな作家だし、彼女ならではの感性が爆発している傑作だとは思うのですが
「作品にしてみたかった」という作家のエゴだけが際立っている印象が、なきにしもあらず、ということで☆は一つ減らしました。
女だからこそ Date:2010-01-17
おすすめ度
女だからこそかける女の嫌らしさ。
男性作家には、やはりここまでは書けないでしょう。

自分の中にも確かにある嫌〜な部分を和江や百合子の姉である私の目線から気付かされる。

女である自分の中のグロテスクに気がついてしまうそんな作品。
「自身の存在意義の究極の追及=「グロテスク」」を描いた力作 Date:2010-01-11
おすすめ度
所謂「東電OL殺人事件」を借景として、人間の持つ悪意や嫉妬、淫蕩と言った負の本性を抉り出した著者らしい作品。意図的に進化論や遺伝の概念を取り込んでいるようだ。物語は前述の事件の被害者をモデルとした和恵の高校時代の同級生の"私"の事件後の回想談や複数の手記で構成される。二人が通ったQ女子高は初等部から大学まで揃えた名門学園。二人は高校からの入学で、特に和恵は柔軟性に欠け、その階層社会に適応出来ない。私の父は在日スイス人で貿易商をしていたが、私の母と妹を連れて帰国する。妹のユリコは重要人物で、怪物的な美貌の持ち主に設定されており、私の悪意の原点となる。私は他者の悪意の記述者ではなく、悪意そのものなのだ。ユリコは母の自殺を機に日本に戻り、Q中等部に編入し、その美貌で他の生徒に圧倒的な影響力を行使する。和恵もその一人と言う意味だろう。ユリコも事件の一年前に同様な状況で殺されると言う設定。

ここで、ユリコの手記を挟んでQ学園での女の嫉妬、イジメ、天性と努力、ユリコ自身の淫蕩性等が描かれる。描写が人工的に過ぎる感があるが、ユリコ自身が"玩具"である事を初めから認めている、即ち、一種の諦観を持っている点に強い印象を受けた。先天性・後天性、運命の問題を論じている様。兎に角、モデルの事件から、被害者の高校時代を描くという発想に作者の独創性を感じた。事件の遠因を探ると言う意味と、事件当時の会社生活を描くより、物語の凄惨・酷薄性が増す効果がある。事件の容疑者張の出身地を中国の地方に設定する事で、作品の幅も広がっている。張の描写にも、ある種の運命論を感じる。オウム事件にも言及する貪欲さ。ラストの和恵の手記のリアルな禍々しさは圧巻。

単細胞生物から突然変異の積み重ねで進化して来た人類そのものが「グロテスク」と言っているかのような、骨太の力作。
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