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猫を抱いて象と泳ぐ

価格:¥ 1,780 (税込)
出版:文藝春秋
カテゴリ:単行本
ページ:368頁
JAN:9784163277509
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で2213位
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レビュー
不思議な世界をたんたんとまったりと Date:2010-01-29
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本屋大賞候補になりましたので再読しました。

この話は現実にありそうだと思える一方、幻想の中をさまようような不思議な感じで物語りは進んでいきます。まったりした進行具合だという印象ですが、悲しいことも寂しいことも面白いことも詰め込まれた物語です。
そんなもろもろのことを含みながらも、物語はたんたんと、実に客観的に進んでいきます。
小川さんの小説は、そのようなたんたんとした感じとそれによるもの悲しさというのを感じるように思います。
このお話も少しもの悲しい感じの印象でした。
しかし落ち込むような悲しいだけのお話ではなく、とても潔いきれいな物語であったと思います。

静かな場所で物語りに浸りたい方にはお勧めの一冊です。
自由に生きるための枠組み Date:2009-12-29
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 自由は人間が求めるものだけれど、本当に完全な自由の下では意外に生きづらいかも知れない。例えば、重力という束縛から解き放たれたら、どこを地面として生活したら良いかも定まらなくなる。愛という概念は何ものからも自由な気がするけれど、人や動物や国という形からも自由になってしまえば愛することも出来ないかも知れない。
 だから、人間が自由を行使するには、自然法則やルールなど、世界を形作る枠組み・世界の輪郭が重要な要素となると思う。

 本作品の主人公はチェス・プレイヤーとなる少年だ。
 囲碁や将棋、チェスに代表されるゲームでは、盤上に表現される駒の動きを"宇宙"と対比させて表現する。この宇宙が人々を魅了するのは、プレイヤー全てが共通して理解できる世界だからであり、共通して理解できるのは、8×8という枠組み、そして6種類の駒が決まったルールに基づいて動くからでもある。
 これを象徴するかの様に、リトル・アリョーヒンが出会う人々は閉じられた世界の中で生きている。デパートの屋上で生涯を終えた象のインディラ。改造したバスの中で生活するマスター。地下世界にしか生活の場を求められないミイラ。小さなロープウェーでしか行くことの出来ない施設で生活する人々。だが彼らは不幸なわけではなく、その枠組みの中でそれぞれの宇宙を形成している。

 枠組みの中で人が生きるのであれば、人の生き様が枠組みをつくるとも言える。だから、チェスだけに生きるリトル・アリョーヒンの言葉は棋譜にある。しかし、棋譜だけでは伝えきれない想いも確かにある。それは、互いに駒を動かす二人が、矛盾するようではあるが、完全に同じ言葉を共有しているわけではないからだろう。
 そのずれを埋めるために、盤の外側にも世界がある。だが、リトル・アリョーヒンの世界は、チェス盤の外側を臨みながらも、棋譜の中だけで閉じた。けれども、残された棋譜から伝えられる想いは、届けるべき者に届いたに違いない。
なんだかなぁ〜〜 Date:2009-12-26
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なんど呟いたことか
小川ワールドへの入国には事前審査が必要なようです
誰でも入れる所ではありません
安らぎと少しの切なさ Date:2009-12-26
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『慌てるな、坊や』
読み終わった後に、何度も思い出しては泣いてしまうマスターの言葉です。
主人公は変わった風貌の持ち主ですがそれはあくまでも1つの要素に過ぎず、物語の中心はチェスの深い、深い海にあります。それがとても心安らぐ文章で書き表されています。小川洋子先生の筆がまさに冴え渡っています。
ものすごく泣いてしまったのですが、決して嫌な気持ちにはなりませんでした。
大切な本になる、そんな気持ちにさせてくれる珠玉の物語です。
久しぶりに小川ワールドを堪能できた Date:2009-09-05
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小川さんの本は全部読んでいるが、久方ぶりにこの長編には満足した。主人公の少年はチェスの天才だが、大きくなれば(大人になれば)不幸になると感じ、自らの意思で体の成長を止めて異形の容貌の人間となり、からくり人形をかぶって対局している。そして、チェス好きの老人が暮らすホームへ流れ、誰にも気づかれずに短い生涯を閉じる……。

こう書くと不幸な人間の物語にも思えるが、主人公は満足していたにちがいない。小さきもの、異形のものがひそかに湛えている美が、繊細な言葉で拾い上げられているからだ。「貴婦人Aの蘇生」にも似た、どこの国ともどの時代ともわからない不思議な時空には、甘美で確固とした世界が確かに息づいている。

小川作品には、耳とか刺繍とか数字とかスケートとか、独特のモチーフが繰り返し出てくるが、チェスが登場したのは数学の延長線上にあるためだろうか。チェス盤に描かれた棋譜が実際にメロディーを奏で、コマを動かすプレーヤーたちの恍惚とした表情が見えてくるような錯覚に、何度も陥った。じっくりと物語世界に浸ることができて、改めて本はいいなあと思わされた一冊だった。
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