銭湯の女神

価格: (税込)
出版:文藝春秋
カテゴリ:単行本
ページ:261頁
JAN:9784163580302
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で787854位

[ Amazonの詳細ページへ ]
エディターレビュー
   中国への返還をはさむ2年間の香港暮らしののち、著者は生まれ故郷の東京へと戻る。異文化からの帰還はこれが2度目である。前回はすぐに日本の日常生活に復帰できたのに、今回は違う。何か居心地の悪さを感じてしまう。

   本書は、そんな著者の違和感を、銭湯とファミリーレストランを回遊しながら透視した39篇のエッセイである。ほかにも、100円ショップ、ゴミ出し問題、銭湯などの身近な事柄を低い目線で取り上げているが、そのいずれもが読みごたえのある消費社会批評になっている。

   星野の批評の基軸になっているのは、香港的リアリズムだ。「一夜にして一家の財産が泡と消えた」り、「生まれた場所を追われた」経験をもつ人々が暮らす都市の日常と思考が、身体に染みついている。香港で暮らすことは、一種サバイバルに近い。苛酷な資本主義社会を生きることを余儀なくされるのだ。それを経験してきた人間には「日本の資本主義社会」は甘えているとしか見えない。

   本書で、星野は「プロセス」にこだわっている。それは、何かを手にするまでの苦労や努力のことだ。インターネットで楽々と情報を得てそれでよしとする態度、どうやったら手っ取り早くフリーランスの写真家になれるかを聞いてくる若者。そんな彼らに彼女は言う、「何かを手に入れるためには何かを手放さなくてはならない。簡単に手に入るものに、重要なものは何もない」。そんな星野を愚直と言う人がいるかもしれない。しかし、それこそ日本人がいま必要としているものなのではないかと彼女は静かに訴えているのだ。(文月 達)

Amazonレビュー
amazon検索