三島由紀夫あるいは空虚のヴィジョン (河出文庫)

価格: (税込)
出版:河出書房新社
カテゴリ:文庫
ページ:180頁
JAN:9784309461434
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エディターレビュー
三島の残した膨大な作品群に比べたとき、文庫本にして150ページあまりの本書は、あまりにささやかか小論といった印象を与えるかもしれない。たしかに作家の生涯を追った詳細な記述も、作品に対する緻密な分析も、本書のなかに読むことはできない。けれどもここには、凡百の三島論とは一味違った特徴が見られる。それは自身がすぐれた作家であるユルスナールが、三島の作品に深く身を浸しながら、そのなかで得られた共感を、繊細な筆づかいで描き出している点にある。訳者渋沢龍彦(三島と長年の親交があった彼もまた、三島文学のよき理解者だった)の言葉を借りるならば、「決して単純なオマージュではないが」「オマージュすれすれなものを」感じさせるこのエセーのなかで、ユルスナールは三島の作品を解釈するのではなく、それを自らの体験として生きようとしているのだ。
例えば三島の遺作である『豊饒の海』4部作の筋立てが、数十ぺージにもわたり語られる。三島本人が主演した映画『憂国』のシークエンスが、文章によって再現される。それらは、作家ユルスナールのなかに熟成された三島体験の軌跡である。とりわけ三島の最期を語った部分は、押さえた筆致のなかに切々とした情感があふれ、あたかも一編の短編小説のようだ。「作者の死はせいぜい作品を認証するだけで、これを説明しはしない」とユルスナールは本書のなかで言っている。彼女が三島の沈黙する死に与える言葉には、深い哀悼が感じられる。(平岡 敦)
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