鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)
翻訳 浦 雅春
価格:¥ 680 (税込)
出版:光文社
カテゴリ:文庫
ページ:372頁
JAN:9784334751166
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で54076位
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レビュー
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おっさんシュールすぎるぜっ!! Date:2010-01-08 おすすめ度 ![]() 下っ端官吏のコワリョフはある朝、重大な異変に気づく。鼻が、自分の鼻がきれいさっぱりなくなっているのだ。それだけではない。顔を隠して外に出ると、馬車から降りる役人の姿が。誰か。自分の鼻だったのである。 シュールすぎる、シュールすぎるよ光文社古典新訳文庫とつぶやきたくもなるところだが、この作品が生まれたのはシュールの語源のシュールレアリスムよりもはるか昔の1830年代。誰によってか。ロシア作家ゴーゴリの手によってだ。 ある朝起きたら名前を失った男が、出社してみると自分のデスクに自分の名刺が背広を着て座っていたというけったいな始まり方をする『壁』という小説が安倍公房にもあるが、そのバカバカしさにおいては本作がはるかに凌駕する。 他に、書類の清書という仕事以外なんの生きがいもない男が、ボロボロになった上着の代わりに新調した外套から巻き起こるその名も『外套』と、誰もが何がしかのやましさを胸に抱えている田舎町にある日都会から査察官が来るという噂がたったことから巻き起こる騒動を描いた戯曲『査察官』の二作も収録。 どの作品も出てくるのは官僚であり、官僚らは誰もかしこもが官僚機構内の階級にとらわれ、そしてとらわれていることそのものにどこかしらやましさを抱いている。 なぜこうも役所や役人にこだわるかというと、彼に役所に務めていた経験があるからと明かすのは訳者の浦雅春だ。彼によるとゴーゴリはその作品に負けないぐらい変な人だったらしく、「国家有為の人物になる」という野心を秘め自費出版をした最初の作品は総スカンをうけ挫折、ドイツへ逃げたという。以降も作品に批評家から批判を浴びるたびに逃亡したという。大学助教授に採用された時も、丸暗記をして臨んだ初回講義だけは上手く言ったものの、それ以降は「親戚がやって来た」とか「顎が腫れてしゃべれない」とか何かと言い訳をこしらえて講義をなんとか誤魔化そうとしたという、ちょっとあれな人だったらしいのだ。 そんな事実を知らされるだけで、このゴーゴリという人のまた別の作品も読みたくなってくるはず。古典新訳文庫であって、ロシア語を正確に日本語に訳すというより作品の雰囲気に合わせたという訳も小粋でいい。 |
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落語調、賛成です! Date:2009-06-05 おすすめ度 ![]() ゴーゴリの中でも特に「鼻」と「外套」は大好きな作品です。 「鼻」は設定からしてありえない(ある役人の鼻が取れて、その鼻が人格を持ち勝手に一人で生活を始めてしまう)のですが、妙な現実味があり抵抗なく読めます(短いし) 「外套」は別に奇天烈というほどの筋ではありませんが(最後に亡霊は出てくるけど)、かわいそすぎる小役人の見事な(?)描写を眺めるだけで十分この作品を読む価値があります。 どちらもまず一回読んだら忘れられなくなるでしょう。 この2作品はすでに岩波文庫で読んでいたのですが、今回新訳が出たと言うことで再度読んでみました。今回の新訳では全て落語調にされており、これが非常によくマッチしてます。軽快でキレがあり、ゴーゴリの魅力がよく引き出されていると思いました。 「査察官」は初めて読みましたが、戯曲でちょっと分量もあるので、全て落語調で読み通すのは少し疲れました。しかしなかなか面白い筋立てだなとは思いました。世界各国で繰り返し演じられているのも納得です。 今昔物語や、それをリメイクした(と言ったら芥川ファンに怒られるか?)芥川作品、星新一などが好きな人はぜひ読んでみてください。「落語調なのはどうなの?」と思われる人は岩波でどうぞ。こちらの訳も秀逸で、十分楽しめます。 |
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「ロシア文学」にもこんな作品が・・・ Date:2009-01-17 おすすめ度 ![]() この本を読んで、「ロシア文学」の先入観がいかに誤っていたものか解りました。今まで、「ロシア文学」は、暗い・真面目な作品ばかりだと思っていました。 ところが、このゴーゴリの作品は「落語」でした。 訳者が、「解説」で敢えて「落語」調の文体で訳した経緯を書いていますが、その文体だけでなく、物語自体が「熊さん、八さん」の世界です。 それだけ「笑い」に満ちた物語で、役人たちを揶揄しまくります。 その「笑い」は、「上」を笑い飛ばすだけでなく、自虐的でもあります。 もう一つの特徴は、その発想のユニークさです。 鼻が勝手に独り歩きしてみたり、外套を新調した途端に世界が変わってしまいます。 そうした独創性に満ちた物語ですが、一方で、細かなところまで詳細に描写されています。 この何とも言えぬアンマッチが、読者を引きつけてやみません。 「ロシア文学」への偏見から解放してくれる一冊になりました。 |
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こりゃ面白い Date:2008-07-04 おすすめ度 ![]() 亀山先生の「カラマーゾフ」新訳をきっかけとしてかどうか、俄然ロシアのねくら文学の面白さが再評価されつつある。「カラマーゾフ」でもわかるように、ロシア文学というものはもともとこんなに面白かったのだ。本書の解説等を読むとわかるが、ゴーゴリ自身が21世紀平成ジャパンに跋扈する「おたく」野郎そっくりではないか。 また9等級だか14等級かは知らないが、ここに出てくる主人公の下等官吏の悲喜劇は、居酒屋タクシーと仲良くする都下の魑魅魍魎役人と大差ない。 それにしても、革命前のロシア人はどうしてこれほどまでにもおしゃべりなのだろう。一人で文庫本1ページ以上をしゃべりまくる。これを浦雅春が軽妙な落語調の翻訳に仕上げてしまったのだから面白くないわけがない。 ML主義による革命後は、現代もそうだが秘密警察の怖さもあって、庶民はなかなか本音をしゃべらないし、しゃべらされない。文学者は書けない、書かない、書かされない。 1世紀以上も前にこんなにも面白い小説が書かれていたということ自体が驚きであると同時に、今の時代、大して面白くもない現代小説を高い金を払って読むよりも、これらの古典をもっともっと読んだほうがよほどいいような気がする。 |
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生きるとは快楽の花摘むことと見つけたり Date:2008-02-28 おすすめ度 ![]() なんと、この本落語調で訳されてます。 賛否両論あると思われますが、僕には 読みやすかったし、斬新でした。 「鼻」なんて今にも「江戸っ子でい」とか 言い出しそうで楽しめました。 しかし、落語調なだけで落ちがないのが残念 でした。 「外套」はむかし読んだ時は、暗いみじめな 話という印象でしたが、語りによってここまで 全体の雰囲気が変わるのかと、驚きました。 「査察官」はあの有名な「検察官」の事です。 登場人物みな悪党の喜劇。狐と狸の化かし合い。 「手前のつらがひどいのに、鏡を責めるお馬鹿 さん」このことわざまでも落語調なのがすごい。 ひとつ気になったのが市長のセリフ、 「その手は桑名の焼きハマグリ」ってのがあって もー舞台はどこなのかと(笑) なにはともあれ、ゴーゴリなんていう硬いイメージ の文豪を、ここまで斬新に読みやすく訳して下さっ た浦先生に感謝です。 |
