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印象派はこうして世界を征服した

原著 Philip Hook , 翻訳 中山 ゆかり
価格:¥ 2,310 (税込)
出版:白水社
カテゴリ:単行本
ページ:278頁
JAN:9784560080016
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で23504位
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レビュー
展覧会が好きな人に Date:2009-12-30
おすすめ度
芸術を鑑賞者側から眺めるだけでなく、ウラ側からも見ることができる、不思議な一冊でした。

美術の専門家ではない自分には難しいかなと思って読み始めましたが、ひきつけられてあっという間に読んでしまいました。
白黒ですが、ふんだんに絵や写真が掲載されている点も、評価できます。
一度でも絵の展覧会に足を運んだことのある人には、楽しんで読める本です。

意外なエピソードが暴かれていて、本当かしら、と少し疑ってしまう面もありましたが。
そんなウラ話も十分堪能できました。
異端が主流になった理由を探った一冊 Date:2009-12-05
おすすめ度
 分かりやすいタイトルです。確かに印象派は世界を席捲しています(特に日本では)。
では、その印象派は発生当時から現在のように隆盛を極めていたのか?

 答えは−御存知の方も多いでしょうが−「否」です。

 発祥の地フランスでは叩かれまくっています。ひどい所では「妊婦が印象派の絵を見ると
流産してしまう」といった、現代人からすると荒唐無稽な話もあったのです。では、それを
評価し、今のように多大な金銭が動く状態を作ったのは何処の誰なのか?

 それは・・・欧州から見れば異端の人であるアメリカだったのです。そう、異端の絵
(印象派はパリ=フランスの主流では無かった)を異端の人(アメリカも欧州とは別の世界)が
評価し、買い始めたことから、今の流れへ続く道が出来たのです。

 他のエピソードを簡単にまとめてみると・・・

・絵は人を高みに導く(教養を身につけさせる)と一部は信じられていた。
・画廊はどうやって絵を高く売る仕組みを開発したのか?
 (名画だから売れる、という訳では無いのです)
・印象派を積極的に受け入れたドイツ。
 (退廃芸術としたナチスも絵の市場価値は認めていた。また、ゲッペルスのように集める人もいた)
・逆に受け付けなかったイギリス。
・イギリスでも受け入れたのは異端の人だった。
 (彼らは前衛が人を進化させると信じていた)
・印象派が世界を統一=占領したのは第二次世界大戦後。
・そしてついに印象派は大富豪のシンボルとなった。
・悲しいかな、日本に於ける印象派(というより美術全般に繋がるのか)の扱いにも記載有。
・画廊&オークション業界(サザビーズとクリスティーズ)の裏話。
・カーク・ダグラスに怒ったジョン・ウェイン・・・
 (ダグラスは映画でゴッホ役を演じた)

 ・・・といったことが詰まった274pです。白黒ですが印象派の名画も多数収録されています。
また、この本は当時の文化的状況もうかがえる一冊です。そういう意味では文化史に興味がある方
にもお勧め出来ます。
印象派が受け入れられてブームになる過程 Date:2009-09-12
おすすめ度
印象が登場した時、アカデミーで拒絶されたというのは、有名なので、多くの人が知っているだろう。たしか、中学校だったか高校の美術の時間に習った。しかし、どのように受け入れられたかは習っていない。本書では、フランスで認知される過程(画廊のオーナーや画家の奮闘)、アメリでは当初から受け入れられたこと。何故、アメリカの美術館が沢山所有しているかが分かる。ドイツやロシアの隠れ印象派ファンの存在や戦争に略奪。歴史的にフランスに反感を持つイギリスでの困難さなど、有名な人、無名な人の様子が描かれている。そして、印象派の絵が、高価になって行く。
日本についての記述は,他に比べると貧弱であるが、バブル期の醜さや成金日本人コレクターの呆れた振る舞いも紹介してくれる。
世界中で印象派をみんなが好きな理由 Date:2009-08-14
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印象派が好きなんていうと、当たり前すぎてつまらないかも知れないけど、好きなモノは好き。日本人が印象派が好きな理由は、万葉集の昔から新古今、演歌や歌謡曲まで風景から心象を語るのが、大好きなんでしょう。というのは、私見です。

この本では、世界でも愛されている印象派が、どのようにして美術界を席捲したかが、描かれています。絵の出来もさることながら、以外と俗な理由です。

著者は研究者でなく、プロの競売人だった人。なので、裏話なんかあっておもしろいです。さくさく、読めました。
描かれているのは世界と人間 Date:2009-07-15
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この本の主役---表面上の---はお金である...と言ってしまうと言い過ぎなのだが、著者は「実際のところ、本書は、絵画を売ることについて書いた本だ」と言っている。しかし、絵を投資の対象として扱う立場から書かれた本というわけではない。何かそれよりも深いもの、について語られている。

世間の多くの人は、有名な美術品が高額で取引されるのを知ってはいても、「美術」というものを世間的な俗っぽさから切り離して「ちょっと高貴なもの」と感じているのではないだろうか。そして、美術を愛する人の中には、その価値を金銭的な面から眺めることを好まない人も多かろう。一方で、美術にはさして興味はないがお金については大いに興味がある、という人も当然多い。
本書は、それらさまざまな人々の意識の裏にある見えない重心のようなポイントを扱っている本だ。

印象派は登場した当初、現在の現代美術が一部の(多くの)人に「わけがわからない」と言われる以上の違和感、それどころか強い敵意を持って迎えられたのに、現在は富とセンスの象徴となっている。その過程、つまり「世界征服」の過程が美術、美術品市場、歴史、文化、そして人間を学び、知り、観察する著者によって描かれている。個別の作品や印象派絵画の特徴に関する記述は必要最小限で、あくまでも美術品を取り巻く社会、世界、人間がテーマだ。美術品ビジネスに携わり、さらに小説も書いている著者の実力か、あくまでも「お勉強」ではなく「楽しみ」で読める。

美術という枠が最初に設定されると読者層が絞られてしまうと思うのだが、それは惜しい。歴史の偶然や国による文化、気質の違いが語られ、行動経済学的な人間心理がかいま見え、画商やオークション会社の人々の姿が描かれ、怪しげな人々の存在が示され、終わり近くには日本のバブルも登場する。広告業界のような視点からは、きわめて長期間維持されて大成功したイメージ戦略とも言えるのだろうか、などとも思った。

自分は美術に関する知識は少ないが楽しんで読めたし、当然ながら楽しみ以外に得られた知識も大きい。美術になじみのある人ならば、さらに深い手応えを感じるだろう。
冒頭のシーンで「美術品の価値を決めているものはなにか?」という疑問(ありふれた疑問ではあるけれど)を持つ読者は多いと思うが、それに対する答はかなりこの本に書かれている。が、最初の疑問よりも大きくて深い、漠然とした問いが読後に残り、もう1冊、美術品の「価値」について掘り下げた本が読みたくなった。

星は、「印象派」というキーワードに反応する人々以外にも広く読んでほしいという応援の意味で1つオマケしている。
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