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知事抹殺 つくられた福島県汚職事件

価格:¥ 1,680 (税込)
出版:平凡社
カテゴリ:単行本
ページ:340頁
JAN:9784582824544
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で1085位
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レビュー
大変おもしろい Date:2010-01-04
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 「闘う知事」がいかに葬むさられて行くかを一気に読ませる。検察との戦い、裁判での闘争もさることながら、前半部分を占める知事としての政策推進、原発問題にからんだ国、東京電力との戦いぶりも興味深く読める。
 でもなんといっても本書の中心は収賄容疑で逮捕されてからの検察の取調べ、法廷での展開である。すでに東京地検特捜部の国策捜査の横暴ぶりは知らぬ人がいないといってよいが、本書を読んでも検察の不正義さ、それを正すことのできない裁判所の怠慢などに怒りを通り越して暗澹たる気分にさせられる。もちろん一方の当事者の書だから、どこまで客観性を担保できるかは読む人間の能力に関わってくるが、本書のすごさは怒りのこぶしを上げ国策捜査を批判するわけでなく、淡々と自らの体験と事実に語らせることによって、国家権力の怖さを実感させるところである。変な主張がない分だけ、読みやすい。
当事者著作の限界か Date:2009-11-03
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検察の取り調べの巧妙さというか、卑劣さがよく分かる。ただし、事件当事者の著作ということで、客観性を欠くのも事実。
収賄の窓口とされた弟の行動についてもっと知りたい。
金をかけない選挙というのを繰り返していたが、裏の仕事を弟にやらせていたのではないかという疑念は、残念ながら読了後も消えなかった。
この事件に関する第三者が書いたノンフィクションが出れば読みたい。
控訴審有罪でますます強まる「無実」の可能性 Date:2009-10-15
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10月14日、控訴審の東京高裁は著者に懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡し
た。一審の東京地裁は懲役3年、執行猶予5年だったから、さらに罪が軽くなったこと
になる。東京地検特捜部は、著者の実弟が経営する会社の土地をゼネコンが買った価
格と、市価との差額1億7千万が賄賂だとしていた。

ところが東京高裁は、賄賂の金額が「ゼロ」だと、贈収賄裁判史上大変珍しい判断を
した。賄賂がゼロ。そういう贈収賄ってあるのだろうか。
つまり、実質的には無罪なのである。東京高裁は、東京地検特捜部の顔を立てたにす
ぎない。それにしてはトリッキーな手である。

この判決で浮かび上がったのは、原発問題や道州制反対などに対して、国家の大きな
力が働いたのではなく、知事を抹殺したのは東京地検特捜部であるということだ。当
時の大鶴基成特捜部長時代、ゼネコンと国会議員の結びつきを狙って手当たり次第に
事件を広げた。その捜査がうまくいかず、引っ込みがつかなくななり、とにかく政治
家を逮捕したいと無理をした。政治家の摘発は特捜の手柄だからだ。
大鶴部長は当時、「福島県汚職を絶対に上げろ。そうでないと俺の出世にかかわる」
と部下に語ったと最近の週刊誌で報じられている。そのことを考えれば、著者が
「誰が私を殺したか」はっきり指摘できない理由がよくわかるのである。
著者は闇夜で撃たれたからだ。

拘置所での特捜部の調べに、著者は一旦「収賄した」と罪を認めている。なぜ、虚偽
の自白をしたのか。やっていないならやっていないと頑張ればいいではないか。本書
のリアリティに疑問を持つ人もいるかも知れない。
実は、私は新宿駅で痴漢に間違えられ、駅員に電車から引きずり下ろされた経験があ
る。幸い、疑いは一瞬にして晴れたが、電車から外に引っ張り出されているまさにそ
の瞬間に、なぜか「自分はやってない」という自信がぐらついたのを感じた。
「やってなくても人は自白することがある」。私はそのことを、身をもって知った。
その経験から本書の、著者が自白に追い込まれていく経過を読むと、うなずけるとこ
ろが多いのである。本書は、そういう状況にたたき込まれた人間がどう考え、どう行
動するかをよく表している貴重な記録だ。

ところで、著者が福島県知事として原発問題や地方自治に関わった経験の章も非常に
興味深い。
原発のトラブル隠しに対する福島県の抵抗で、一時東電の全原発が止まったのは記憶
に新しいが、著者が県知事として対峙した東電や経産省の事故隠しやプルサーマル計
画の政策変更のいい加減さ、官僚の絶対無責任体制には改めて驚かされる。また、
著者ら改革派知事が、全国知事会において小泉内閣の「三位一体改革」に協力し、自
分たちの歳入不足の痛みを承知で地方への財源移譲のために奮闘するくだりでは、改革
派知事たちが官僚に次々に切り崩される様子が描かれている。片山義博元鳥取県知事や、
浅野史郎元宮城県知事が寝返り、自分たちの出身母体である中央省庁に尻尾を振って
地方分権に背を向けていたさまが明らかにされており、現在の彼らの態度と全く違う
事実は衝撃ですらある。

民主党政権になって動き出そうとしている財源委譲は、すでに著者たち改革派知事が
2003年に取り組んでおり、官僚たちの抵抗で骨抜きになった。橋下、東国原など今の
知事たちは、かつての全国知事会が無能であり、あたかも自分たちの力で地方分権論議
をやっているようにパフォーマンスしているが、本書を読むとその「底の浅さ」や欺瞞
がひしひしと伝わってくる。なぜ今までそのことが伝えられなかったのかが不思議だ。

そういうわけで本書は、ひとりの地方政治家が東京地検特捜部に陥れられた手記とい
う枠を超え、自民党政権末期の原発・地方自治政策を総括し、これからの「国のあり
方」を指し示す本としても読める。全国で読まれるべき本である。
自治真っ青 Date:2009-09-28
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 『知事抹殺』は、その内容から「原発」「道州制」「裁判」の3部構成となっている。福島県知事佐藤栄佐久は「原発」「道州制」に関して国に造反した結果、「裁判」の俎上に乗せられたというわけである。読者としては、「原発」「道州制」のどちらが真の「逆鱗」であったかに興味がある。「抹殺」を謀ったのは誰か、ということでもある。
 しかし氏は、事件の分析の為にこの本をものしたのではない。2006年2月の米国GNEP構想に言及することもない。謀略の源を解明しないまま、つまり、誰に切られたのかに言及しないまま、切られた自分は正しかったと主張する。独白に終始するだけなのだ。読後、墓碑銘をただ読まされたかのような空虚感におそわれるのは、氏の苦悶の相貌の背後に、暗い闇しか見いだせないゆえである。
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