少年少女 (1巻) (Beam comix)
この書籍を買った人はこんな書籍も買っています
エディターレビュー
一読して作者の高いマンガ創作能力にうならされる、珠玉の短編が詰まった作品集。タイトルにあるとおり、収録された作品は思春期前後の「少年少女」たちの姿を描いた青春物語がメインではあるが、作品ごとにその味わいは大きく異なる。
たとえば冒頭の「触発」は、ふざけ合っている最中にはずみで男友達の兄を古井戸に突き飛ばし転落死させてしまった少女の物語。子供ながらに一生懸命現実に向き合って、自分なりの決着をつけようとする、重い因果を背負いながらも前向きなエピソードとなっている。ところが同じキャラクターを用いた「錯綜」では、男友達の側に視点を移し、ちょっと甘酸っぱい初恋の香りを漂わせつつ彼のほんのちょっぴりの成長を描くといった具合。
このほかにも、行き場のない男女の刹那(せつな)的な青春模様を描いた「OPEN THE DOOR」、モダンホラー的な味付けの「美しい骨」、自動車を改造してばかりいる変わり者の男と少女の間を流れる時間をゆったりと描いた「自動車、天空に。」など、ストーリーの引き出しの多さには驚かされる。そして多様なストーリーを、実に鮮やかに料理している。まさに変幻自在である。
派手なアクションがあるわけでなし、大恋愛、大事件が起こるわけでもない。すこぶる抑制が利いた作風は地味にさえ映るかもしれない。しかしマンガを描く技量は抜群に高い。まずなんといっても、洗練された確かな描線に支えられた作画力、ときに大きなコマを大胆に使う印象的な構図取り。それから少ないセリフに多くの想いをさりげなく込める言葉選びのセンス。読み込むほどに、作者が1つ1つの描写に込めた意図が伝わってきて、味が出てくる1作だ。(芝田隆広)

