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国家を騙した科学者―「ES細胞」論文捏造事件の真相

原著 李 成柱 , 原著 〓 淵弘 , 翻訳 〓 淵弘
価格:¥ 2,415 (税込)
出版:牧野出版
カテゴリ:単行本
ページ:341頁
JAN:9784895000956
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レビュー
科学報道の問題点は韓国のものだけではない Date:2008-03-09
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黄禹錫によるES細胞論文捏造事件は、マスコミ、政界を初めとして、一国の国民全体を巻き込んだ大事件となったという点で、数ある論文捏造事件の中でも極めて特異なものであった。私も、接したニュースからそれを感じていた。本書では、発端から崩壊までを詳細に追っていて、事件の全体像を明白にしてくれている。

事件がこれだけ大きな広がりを見せたのには、事大主義という言葉に象徴される韓国の国民性が、英雄を必要としていたからであることは否めない。しかし、メディアの暴走が果たした役割は極めて大きく、それは、わが国もメディアも五十歩百歩で持っている性質だ。メディアが作り出した雰囲気に自分自身が飲み込まれて、それに反対する議論を抹殺していく。これと過激な“ネット世論”が相互作用して暴走して行く姿は、わが国でもしばしば見られる。

本書が指摘している不正確でミスリーディングな科学記事、特に学問的な価値よりも目先の有用性(実際にはそれすらも誤解・曲解である場合がしばしばである)にばかり偏った記事や、発表の通りを垂れ流すだけで科学を理解しようとしない記事の問題点も、わが国のメディアは共有している。

これらの科学報道の問題点が最も病的に現れたのが本事件で、その経緯から学ぶべきことは多い。科学に携わる者、科学報道に携わる者は読んでおくべき書である。
韓国のジャーナリズムの再生を願って書かれた本 Date:2007-11-24
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 捏造に基づくES細胞研究が、なぜ、韓国内で大きな事件を引き起こすまでに至ったか経過を詳しく解説した本書、文章のかなりの部分が韓国のジャーナリズムがどう行動してきたかについて書かれていて、読んだ直後にはその理由がよくつかめませんでした。そしてしばらくして気づいたのが、新聞社を辞して執筆した本書を通して著者は、韓国ジャーナリストに「ジャーナリズムの再生」、そして韓国の国民に「『ジャーナリズムの監視役』としてメディア・リテラシーを高めて欲しい」と訴えたかったのではないか、ということでした。
 本書に書かれている韓国のジャーナリズムの姿は、日本のジャーナリズムと無縁ではありません。例えば本文中で、韓国のジャーナリズムが近年、通信社からの内容を吟味しないで紙面に載せてしまう傾向にある、といったことが述べられていますが、日本で客観報道の名のもとに、政府発表の内容を十分、吟味しないで掲載してしまうことが往々にしてあります。日本のジャーナリスト、ジャーナリストを目指す人、あるいはジャーナリズムに関心のある人に、本書中のひとつひとつの事例について「日本はどうか」という視点から読んで欲しい本です。
韓国の国民性が分かった様な気がします。 Date:2007-09-22
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この本からは次の二点が得られた。

1.熱狂的、しかも一度良いと思ったら盲目的になる韓国の国民性。
 私はそれが悪いとは言わない。日本人だって、右に倣えをする悪しき国民性がある。
 あくまでも黄教授のES細胞の事件が韓国の国民性を浮き彫りにしてくれたと思う。
2.著者の李氏のジャーナリスト魂に敬服した。
 同じ国民の闇にスポットライトを当てるこはさぞかし、苦しいことだと思う。
 しかも、この本を書く為に韓国の主要新聞である東亜日報を辞職している。
 まさにジャーナリストの鑑である。
韓国だけで終わるか? Date:2007-02-12
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遺伝子治療に必要な万能細胞ES細胞が出来たと捏造した事件の経緯である。
いやはや実に恐ろしい。以前から、見栄っ張りで研究費を指摘流用して接待に当てたり、他にも成功したという割には論文を書かない先生だったようだ。以前より疑いはあったものの、熱狂的な黄禹錫ファンによる自殺騒ぎやら、デモ行進やらで、疑問を呈しようものなら殺されかねない勢いだったようだ。科学のナショナリズムとしてだけではなく、朝鮮半島のいろんなところにこの構造が見え隠れしているような気がしてならない。
しかしこれと似たようなことは、大戦中の日本でも似たような事があり、常に風通しの良い社会が必要であろう。
面白いことは間違いない Date:2007-01-25
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捏造事件はどこの国でも起こるが、事件の主役が国民のアイドルという事態は稀である。黄禹錫は文字通り韓国の国民的英雄だった。あらゆるメディアが絶賛し、国家の生命工学構想の中心となり、小学校の教科書にまで登場するなど、全国民から尊崇されていた。捏造が発覚して国家規模の大騒動になるまでは。

本書は黄禹錫の手口、メディアによる神格化、政府や科学界の動きまで多岐に渡って追っており、具体的かつ詳細で非常に面白い。しかし読み終えて大きな違和感を覚えた。それは、いくら優秀(と思われていた)とはいえ、なぜ一人の科学者を皆で英雄にまで持ち上げたのかという根本的な部分についてだ。騒動の過程を読むと、黄禹錫本人だけでなくメディアも政府も国民も進んで英雄化を後押ししたように見える。著者はその原因を心理学的に説明するが具体性に欠ける。

外国人からは度々指摘されているのだが、韓国人は自らの強力な愛国心と自尊心から来る、ノーベル賞コンプレックスを持っている。ひらたく言うと「優秀であるはずの韓国人がノーベル賞(平和賞以外)を受賞していないのはおかしい。国家の恥だ」という意識だ。それ故に韓国人はノーベル賞に強い執着がある。黄禹錫は「超優秀でノーベル賞確実」とされ、これが英雄化の大きな一因となった。先に挙げた教科書で黄禹錫が登場するのは「ノーベル賞に挑戦する人物」という趣旨の部分である。だが、こういったことに著者は触れていない。韓国在住の韓国人には気付かないことなのだろうか。

この原因部分の欠落のため、本書は個々の事例は具体的だがその土台があやふや、という奇妙な形になってしまっている。そして、著者の意図しないこの奇妙さこそが、騒動を生み出した背景の特殊性を物語っているように思える。

とはいえ、語られる大騒動の顛末はやはり面白い。国家を揺るがした事件のノンフィクションとして、読んで損の無い一冊である。
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