見続ける涯に火が・・・ 批評集成1965-1977
価格:¥ 3,570 (税込)
出版:オシリス
カテゴリ:単行本
ページ:512頁
JAN:9784990123949
Amazon.co.jp 売上ランキング:本で314180位
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レビュー
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これを読んで僕も、メロメロです。 Date:2009-11-20 おすすめ度 ![]() 77年に突如として記憶喪失に陥りながらも快復、今もなお撮り続けている写真家中平卓馬が、喪失前の65年から77年にかけて雑誌「アサヒカメラ」をはじめとする各種媒体に発表した批評などの文章をまとめた一冊。 写真家としての彼はこの間、アレ・ブレで評される身体性に密接した動的な写真から、『なぜ、植物図鑑か』以降の対象を静的にとらえる写真へと、大きなパラダイムシフトを遂げているがしかし、写真“批評家”としての彼の問題意識は、ずっと写真を見る側の我々が、生きている上で終始囚われているであろう観念、彼のいうところでのイメージに、いかに囚われずに物を、世界をまっすぐ見るか、ということだったのは興味深い。ついでに、近代的な芸術家観の呪縛から自由になりながらも、自由になったが故に返ってそのあり方の無規定性に苦悩する彼の姿も垣間見える。 彼の中にはおそらく、写真があくまで世界の断片しかすくい取れないという諦念と、にもかかわらず世界そのものを激写したいという欲望という力極端の感情が渦巻いている。「いま・ここ」の記録でしかない写真。その写しとる「現実」とはあくまで虚構でしかないのだ。そのことに自覚的な彼であったからこそ、写真を「利用する」権力の側の暗躍に、特にセンシティブに反応していたのだろう。 技法的な問題は余り取り上げられていない。写真初心者でも内容理解はおそらくできるであろう、注目すべき思索の痕跡。 |
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厚い書物 Date:2007-05-19 おすすめ度 ![]() 「思考が視覚を批判し、視覚が思考を試練にかける。」浅田彰が本書の帯で記したこの言葉が持つ凄まじいダイナミズムを本書は余すところなく示している。読者は、中平卓馬という一人の人物から発せられた言葉と作品が、「思考」と「視覚」という両極に引き裂かれながらも圧倒的な魅力を以って現前する場に立ち会うことになるだろう。一読すると、鋭く深く綴られた中平の言葉は、多様なスタイルを取りながらも明確な一本の筋を持っているように思われる。しかし、その筋は、見返しに差し挟まれた近作によって途端に打ち消されてしまう。のべつ言葉の筋は作品によって打ち消され、作品の筋は言葉によって打ち消される。それはこれまでの中平の姿とも一致するのだが、両者は互いに断絶したものではなく、それぞれが強力な芯を持った磁場として、斥力と引力を併せ持ちながら葛藤を続けている。その様な両極への揺れ動きが持つ振幅の豊かさにこそ、私たちが写真と関わり続ける契機が秘められているのだが、中平が生むそうした振幅に対して私たちは如何に応答することができるだろう。私たちは、あらゆることに周到に眼を配りながら思考をすることが可能になった「厚い世界」の中で、多種多様な主義主張を整理し選択を積み重ねることで思考を形成することに慣れきってしまっている。中平にそうした周到な選択は無いが、他の追随を許さぬ何かがあることを本書は強く訴えかけてくる。それこそが「見続ける涯の火」であるのだろう。「火」は「厚(熱)く」読者を待っており、多様な読みに向かって燃え続けている。読者一人一人は「火」に油を注ぐ存在であらねばならないし、この五百頁を越す厚い書物はそれを可能にする。その点において、ベンヤミン、バルト等と並ぶ写真のカノンとなるだろう。 |


