【復刻版】森田草平の『煤煙』―平塚雷鳥との心中未遂事件の顛末 響林社文庫

編集 しみじみ朗読文庫
価格: (税込)
響林社
ページ:309頁
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エディターレビュー
【解説】
夏目漱石門下生の中でも異色の存在だった森田草平と、後に「元始女性は太陽であった」で知られる平塚雷鳥との心中未遂事件に至る顛末をまとめたノンフィクション小説です。
森田草平は、東京帝大を卒業し、自分の出自に疑問を抱き厭世感に囚われていましたが1908年、女学校教師をしていて、閨秀文学会でそのメンバーの平塚明子(はるこ、平塚らいてう)と恋仲になりました。草平は既に妻子がありましたが、出産を口実に実家に行ったきりだったこともあり、二人は栃木県塩原へ駆け落ちし、心中を試みますが、雪の中で疲れ果てて果さず帰京しました。平塚は日本女子大卒の才媛でしたから、帝大出の草平との醜聞は新聞の格好のネタになりました。
漱石は『朝日新聞』の文芸欄を担当していたことから草平に勧めてこの事件を小説として連載させ、1909年1月元旦から約1年半にわたって連載されて反響を呼び、これを契機に作家としての道を歩み始めました。平塚も、信州でしばらく静養の後、女性の文学仲間らと女性だけの文芸雑誌「青鞜」を刊行し、(羽毛が生え替わる)雷鳥と名乗って「元始、女性は太陽であった」と宣言するなど、社会に大きなインパクトを与えました。
この心中未遂事件は、塩原事件とも呼ばれていますが、草平は、その著『夏目漱石』の中で、自ら煤煙事件に触れていますが、塩原から戻った直後は漱石の宅でやっかいになった由で、その際、漱石は多くを語らずそのまま受け容れてくれたこと、そして立ち直らせるために、朝日文芸欄で書く機会を提供してくれたことなどを、漱石への感謝と懐旧の念とともに書いています。ただし漱石は、草平が事件後、「恋愛以上のものを求め、人格と人格との接触によって、霊と霊との結合を期待した」と述べたのに対して、漱石は「結局、遊びだ」と一蹴しています。また、『それから』の中で、登場人物に「煤煙」があまりうまくないと批評させているなど、評価は高くなかったようです。しかし、社会に大きなインパクトを与えたことは間違いなく、森田草平の出世作にして代表作となっています。

【復刻版の底本】
本書は、昭和7年1月20日発行の岩波文庫を復刻したものです。全般的な焼け、しみ、印刷かすれ等について調整加工しているため、見にくい部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。
 ※ 冒頭に、夏目漱石による「序」をつけていますが、これは、復刻した岩波文庫には含まれていません。
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